首都圏から関西へ転職する人が増加

東日本大震災後、移住を考える人が増えている。 総務省公表による2011年3~5月期の住民基本台帳に基づく人口移動報告によれば、東京圏から大阪圏への転出は14.5%増、名古屋圏へも5.9%増え、福岡県へは25.4%増となるなど西日本への転出が目につく。

「首都圏から関西への転職者が増えた」というのは転職支援サービスのリクルートエージェント。なかでも目立つのが技術者の転職だ。同社の広報担当・鶴巻百合子氏は言う。

「震災後、放射能の影響への不安から、技術者が家族とともに西へと移住を希望するケースが増えている。5月、6月と前年同月比約2倍の実績がある。世界規模の部品メーカーが関西には数多くあり、求職者1名につき求人企業は4.5社と需要も多いです」

企業勤めの場合、転職相談から実際の転職まで通常は3~4カ月かかるが、フリーとなると行動は迅速だ。イラストレーターの時川真一氏は、震災の1週間後に東京から沖縄へ避難、2カ月後には本格的に引っ越した。釣りが好きで将来は海沿いで暮らしたいと思っていたが、原発事故をきっかけに妻と1歳の娘とともに移住を決行した。

沖縄暮らしの生活費

沖縄暮らしの生活費

オーシャンビューの70平方メートルのマンションは家賃6万円、1カ月のトータル生活費は平均23万円。平均38万円かかっていた東京時代と比べて、生活費は約4割減となった。美しい自然環境に囲まれて、釣り・シュノーケリングを週に2回は楽しんでいる。

「テクニカルライターの妻は、在宅勤務が可能な都内の会社を見つけ、現在はそこから仕事を請けている」(時川氏)と、ダブルインカムも保たれている。時川氏は現在のところ地方移住の成功例といえる。

地方移住事情に詳しい田舎暮らしコーディネーターの空閑睦子氏によると、最近特に注目されているのが放射能の心配が少ない沖縄、北海道と、首都圏から行きやすい長野の3エリア。「これまで漠然と田舎暮らしをしたいと考えていた人が、震災をきっかけに予定を前倒しする傾向がある。特に子どもがいる世帯はその傾向が強い」と述べる。

ただし地方に移住すれば経済的に楽になると考えるのは早計だ。「家賃は東京都区内よりは安い。しかし敷金に当たる保証金が家賃の6~10カ月分、礼金はその約半分というケースもあります。水道光熱費や社会保険料なども割高」(空閑氏)。移住後、首都圏と地方とを往き来する用事があれば交通費もかかる。これらも含め移住前にトータルコストを算出する必要がある。

「住宅・土地購入のための低利融資制度など、各市町村には移住後の生活に有利な各種優遇・支援制度が用意されているので、調べてみてください」(空閑氏)。