■橋本忠男さん profile
年齢:65歳
年収320万円 現在は年金のみ。
貯蓄約2億円 親から受け継いだ機械商社をM&Aで売却。
住居春から秋は伊達でロッジ暮らし。冬は東京・小金井の自宅で過ごす。
月の生活費約70万円
10年後のビジョンある年齢に達したら小金井の家を売却し、都心のマンションを購入。夫婦で映画や演劇を見ながら過ごしたい。食事も外食を楽しみたい。

橋本さんは1942年生まれ。東京で機械商社の経営に携わっていたが、会社を売却。第二の人生を北海道伊達市で始める。「コテージの賃貸契約から、乾燥機の設置まで全部自分で交渉しました」と橋本さん。「心の伊達市民」として、移住を考える人々に情報提供を行っている。

男女とも80歳まで生きる時代となった。そうなると壮年期に買った家で死ぬときまで暮らすのは不便だし、不経済だ。子どもたちが独立したら部屋数は必要ない。定年になったのに、通勤時間を考えて買った家は必要ない。新しい場所へ移り、夫婦ふたりでのんびり暮らすほうがいい……。そう考えている人は多いのではないか。

これから紹介する橋本忠男さんと山口さん(仮名・次回登場)は定年後を見据えて、住居を変えた。そして、ふたりとも都会と田舎の生活をバランスよく組み合わせている。ある意味では理想の生活をしているふたりだ。

橋本忠男さんは65歳。妻と娘ひとり。娘はすでに独立している。橋本さんは父親から継いだ会社を発展させ、60歳のときにM&Aで売った。そのため数億円の資産を手にしている。橋本さんはその資産を元に悠々自適の生活に入ったのだが、5年前、北海道旅行をしたときに、「住んでみたいな」と思う場所に出合った。それが北海道の道南にある伊達市だった。

「最初は海外に移住しようと思ったんです。僕は海外で仕事をしていたから言葉には困らない。東南アジアがいいかなと思っていた。しかし、年を取ってくると食べものがねえ。やっぱり和食がいい。それに病気になった場合、海外だと不安でしょう。そこで北海道をうろうろしてたときに、偶然、伊達を知った。伊達についてはここにいる(横に座っていた)伊達信用金庫の楽木(恭一)理事長に聞いてください」