一方、首都圏から海外脱出をはかる動きも出始めている。

「震災直後から海外転職の問い合わせが増えた」というのは、テンプスタッフ広報室の山本千里氏。同社が海外拠点を置くエリアの中で、問い合わせが多く、求人もあるのがアジア諸国だ。

インドネシアの場合、メーカーの技術者、工場長、生産管理の仕事など工場系を中心に求人は多く、売り手市場だ。日系企業の現地採用が大半で、雇用主からの推薦と保証があればビザ取得は容易。30~40代の求人は、技術職、製造管理のマネジャー、営業職に集中している。現地採用の平均賃金は15万~28万円。

次は中国。「求人は多いが、営業職は中国で働いた経験があり、中国語が話せないと難しい。ただし日本企業の現地採用で、対日系企業向けの営業職の場合は日本語のみでも大丈夫。技術者、とくに金型技術者など特殊な技能を持つ人のニーズは非常に高い」(山本氏)。現地採用の平均賃金は、9万~20万円。技術者だと100万円程になるケースも。

続いてシンガポール。10年度のGDP成長率は建国以来最高の14.7%と好況だが工場の数が少ないので工場技術者の求人も少ない。日本人男性は基本的に営業、日本人女性は営業、総務、秘書、営業事務となる。現地採用の平均賃金は20万~26万円。

「技術者、語学力、現地で勤務経験がある、この3点がアジアで転職をする際に有利なポイントです」(山本氏)

アーリーリタイアメントで海外生活という選択肢もある。

「海外に住むといっても、永住権を取るのではなく、生活の基盤は日本に残しながら長期の海外滞在を楽しむのが現実的です」というのはロングステイ財団の山田美鈴氏。

マレーシア暮らしの生活費(写真=マレーシア政府観光局)
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マレーシア暮らしの生活費(写真=マレーシア政府観光局)

その一例、09年11月にマレーシアのクアラルンプールに妻とともに渡ったA氏(54歳)は、130平方メートル、3LDKの家に住み、週3回のゴルフを楽しみながら1カ月を平均約24万円で暮らす。20年前、ロサンゼルスの友人夫婦を訪ねた際、普通のビジネスマンである友人が、家のすぐ近所でゴルフを楽しみ、自宅にはプールがあってという「本当の豊かな生活」を送っているのを目の当たりにした。以来、いつかは海外で暮らしたいという夢を持ち続け、夫婦の趣味であるゴルフを存分に楽しめる環境を探してこの地に行き着いた。

滞在先を探すためにマレーシアに下見に訪れ、2日で10件ほど賃貸物件を回り、もっとも気に入ったゴルフ場に近いコンドミニアムの中から、100平方メートル以上、高層階など希望の条件に合致した、いまの住み家を選んだ。