ステークホルダーも納得する「高度成長」
今年、私は52歳になります。映画の主人公であるレイ・クロックが「マクドナルド」と出合った年齢です。この歳から巨大「ハンバーガー帝国」を築き上げたのは驚きで、すごい経営者だなと思いました。彼がビジネスをした時代、特に1950年代から80年代の米国社会は、資本主義が健全に機能した時代でした。資本主義の解釈はいろいろありますが、経済が成長してこそ機能します。
実は、現代の日本で企業経営をするむずかしさは、「ステークホルダー(利害関係者)の利害対立とその調整」だと思っています。たとえば最近の「宅配便の配達問題」であれば、利用客の使い勝手を最優先して、朝から夜遅くまで再配達も含めて届けるのか。それとも荷物を仕分けして配達するドライバーの業務環境に配慮して、配達時間の短縮や一部の再配達を見直すか。「お客様の利便性⇔従業員の働き方」というステークホルダーの利害対立が生じます。低成長時代には、さまざまな局面でこうした対立が起きてしまう。
一方、日本も米国も高度経済成長期には、こうした対立は起きにくかった。会社は大量生産・大量販売で売り上げが毎年右肩上がりとなります。従業員も働けば働くほど給料は上がり、持ち家や家電製品も手に入り、暮らしがよくなります。“モーレツサラリーマン”と呼ばれた長時間労働はありましたがあまり問題視されず、「成長がすべてを癒し」たのです。
レイ・クロックが築き上げた「マクドナルドのチェーンストア理論」は、日本の外食産業に大きな影響を与えました。あの時代に均等な品質・大量生産・効率性を追求したことには敬意を表します。現在、国内の外食産業の市場規模は25兆1816億円(前年比2.2%増)となっています(日本フードサービス協会の調査による推計。2016年7月発表)。パートやアルバイトを含めると従業員は約480万人という巨大市場に成長しました。
一見、順調そうに見えますが、現在はチェーンストア理論の限界もきていると感じます。