「成長時代」の手法の行き詰まり

この映画で描かれているのは「成長時代」ですが、現在の日本は少子高齢化で人口も減り続ける「成熟時代」です。成長時代は、たとえば若年人口が増えていれば働き手も多く、従業員の獲得もむずかしくありません。「量」を追い求めても一定の「質」は担保できたのです。でも成熟時代は「質」と「量」は両立することが難しくなってきたと感じています。

新店舗の前で得意げに両手を広げるマイケル・キートン演じるレイ・クロック。(C)2016 SPEEDEE DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

少し前、「ロイヤルホストが24時間営業をやめる」というニュースが大きな話題を呼びました。実は以前から当社が取り組んできた計画で、6年前には24時間営業の店は約40店ありました。そこから徐々に対応店舗を減らし、今年1月で最後の1店をとりやめたのです。

今でこそ業績は順調ですが、私がロイヤルホールディングス(以下、ロイヤルHD)の社長に就任した2010年当時、業績は低迷していました。社業の中身を精査しながら「今後の10年でどんな会社をつくるか」を従業員と社内対話を続けた結果、「成熟時代に合った『質の経営』で行く」ことを掲げ、事業活動を見直したのです。

現在、「ロイヤルホスト」では国産食材のメニューを強化していますし、各店舗に料理人がいてキッチンでひと手間加える調理が特徴です。営業時間を短縮すれば、従業員に余裕が生まれ、食材の品質を高めれば、こだわりを持って調理も接客もできます。社長就任当時から、長時間労働や高い離職率があたり前ではない会社をめざしてきました。

マイケル・キートンが演じるレイ・クロックが、初めてマクドナルド兄弟が経営するハンバーガーショップに行った時、店のスタッフが手際よく調理し、注文した品があっという間に提供されることに驚きます。お客様も店の前でおいしそうにハンバーガーを食べている。まさに「消費者の喜ぶ商品を画一的に効率よく販売する」システムです。