7月29日から公開予定の映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』。主人公は世界最大のハンバーガーチェーン「マクドナルド」を築き上げたレイ・クロック。50代にして革新的なシステムで大成功を収めた姿を、彼の自伝『成功はゴミ箱の中に』(プレジデント社)をもとに描いている。「世界一のファウンダー(創業者)」を目指す彼のビジネス手法を、現代の識者はどう観るのか。映画公開記念の連続インタビュー、第3回は「コメダ珈琲」の臼井興胤社長です。

全世界に浸透した「アクセラレーター」

「マクドナルド」には特別な思いがあり、映画の原作の単行本も読んでいました。僕は小学5年生のときに、初めてあのハンバーガーを食べました。まだ日本に1号店ができる前で、ファッションも含めて米国文化に憧れた少年時代を送ったのです。

新店舗の開業日に押し寄せる人々。(C)2016 SPEEDEE DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

でもこの映画を観て、ハンバーガーの文化や時代背景も理解しました。マクドナルド兄弟の「マクドナルド」は1940年創業ですが、映画の主人公であるレイ・クロックが店に行き、兄弟と出会ったのは1954年。僕が生まれる4年前です。他のハンバーガーショップで、ローラースケートを履いた女性従業員がお客さんの前に滑りながら商品を持ってきて、他のお客さんが「まだできないのか!」といら立つような時代。それを誰もがストレスなく楽しめる、手軽で迅速なシステムにした「マクドナルド」方式のすごさを再認識しました。

僕は2006年から2年間、日本マクドナルドにいました。COO(最高執行責任者)の立場で入社したのですが、実は入社前に立場を隠して、近所の「マクドナルド」店舗でアルバイトもした。当時は外食産業が初めてで、現場を学ぼうと思ったのです。

その現場体験も踏まえて思うのは、「マクドナルド」の店舗オペレーションは世界有数です。特にマニュアルは素晴らしい。“移民の国”ともいわれる米国では、人種や育った背景が異なる人が、同一の高水準で接客する必要があることから、あの世界共通のマニュアルができたわけです。マクドナルド兄弟の仕組みを進化させて、全世界に均質化・平準化できるFC(フランチャイズチェーン)店を築き上げたレイ・クロックは、やはりすごい人物です。

映画のタイトル「ファウンダー」(創業者)というのも意味深で、「レイはファウンダーなのか」など、さまざまな解釈ができます。米国人だからつけたという気もしています。別のタイトルなら何があるか?

たとえば「アクセラレータ―」(加速器)でしょうか。