いい加減な店舗展開に「マジ切れ」

これまでいろんな会社で仕事をしてきましたが、往々にして「0から1をつくる」起業家は拡大を恐れます。「生みの苦しみ」を知っているからでしょう。

全米の地図に指で示すマイケル・キートン演じるクロック。(C)2016 SPEEDEE DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

映画でもありましたよね。マクドナルド兄弟が「これ以上の店舗拡大はのぞまない」と言う場面が――。でも、52歳になるまで多くの職種を経験しながら、強烈な「のし上がってやる」意識を持ち続けていたレイにとって、“こんな素晴らしいビジネスモデルを、なぜ拡大展開しようとしないのだ”との思いだったのでしょう。

今でもマクドナルド社内では、レイ・クロックは神様のような存在です。ぼくはマクドナルド在籍当時に一度だけ、レイの下でNo.2を務めていたフレッド・ターナーに会ったことがありますが、彼もカリスマ的なオーラがありました。

自分の生み出したビジネスモデルではないにも関わらず、映画ではレイの強烈な思いを示すシーンがあります。会員だった地元の社交クラブの仲間にFC店運営を持ちかけた後、いい加減な店舗運営をする彼らに“マジ切れ”する場面です。

「何で、あんなに店が汚いんだ!」「勝手にチキンなんか売るんじゃない!」

あの怒りは、ハンバーガーショップへの愛情よりも「オレが大切にするシステムが崩れる」という怒りだったと思います。そして、レイの掲げた理念にも感動しました。各地に店舗展開をする時、どの町にも「教会」がある。あれは「家族が集う場所」だと説明して、そのような場所にしようと。「ハンバーガーショップを展開しよう」ではないのです。

先日、コメダ社内の開発会議があった時、僕は部員たちにいいました。「この映画を絶対に見なさい。開発理念が詰まっている」と――。コメダの店舗開発は、単に物件開発ではなく、地域振興の役割も担っています。それぞれの土地にとって「くつろぐ、いちばんいいところ」となる店づくりはどうすればよいか。映画を観て、各自が考えてほしいのです。