東日本大震災の後、いまだ10万人を超える人々が避難生活をしている。政府の計画ではこの夏までにおよそ5万戸の仮設住宅が用意されることになっており、岩手、宮城、福島の3県では連日突貫工事が続いている。
「建設現場では朝礼が欠かせません」
そう語るのは大和ハウス技術本部の空(そら)道一部長だ。空部長は阪神・淡路大震災後も仮設住宅工事を担当し、今回は福島県の現場全体の責任者を務める。
「地元の建設会社を優先しています。大きな現場の経験がない人もいますし、ほとんどが初めて顔を合わす人です」
空さんが案内してくれた現場は福島県伊達郡川俣町にあり、福島第一原発の周辺地区から避難した人々が入居予定だ。町営のグラウンドがあったところを整地して、160戸のプレハブ住宅を建てる。工事関係者は大工、電気関係、配管、内装など200人内外だ。
朝8時から15分の朝礼を行う。グループ別のミーティングの後、すぐ仕事に。完成を急ぐので、配管のための地面掘削といった仕事は夜中も行う。午前4時近くまで働くこともあるという。
朝礼で、ひときわ元気のいい声であいさつをする人がいた。大工職の三浦鉄男さんである。三浦さんの自宅は計画避難地区にあり、指示があれば避難所もしくは仮設に入らなくてはならない。
「私はまだ自宅から通っています。ですが、仲間の一人は避難所から来ています。大変ですけれど仕事があるほうがいい。毎日忙しいのがいちばんです」
三浦さんはいろいろ訴えたいことはあるのだろうけれど、切羽詰まった表情ではなかった。横にいた空さんは「地元の人は明るいんですよ。土壇場の人間の強さを実感しています」とつぶやいた。彼もまた3月11日に担当を命ぜられ、すぐ赴任。仮設住宅の現場では朝礼に限らず、コミュニケーションを取りながら手に手を取り合って働くことが必要なのだろう。