町の理容室の経営は決して順調ではない。若い男性は理容室よりも美容院を好むようになり、少子化が進み、客数も頭打ち状態……。

各店舗で毎朝5分ほど朝礼を行う。女性従業員たちは身振りを交えて大声でスローガンを唱和する。

各店舗で毎朝5分ほど朝礼を行う。女性従業員たちは身振りを交えて大声でスローガンを唱和する。

そんな状況下で「元気の出る朝礼」を導入し、新規の客を呼び込んでいるのが東京・学芸大学駅付近で店舗展開する「おしゃれさろんナカガワ」だ。

マネジャーの中川浩志氏は「朝礼ではとにかく大声を出すようにしています。スローガンを唱和して元気を出し、一体感を高めることが目的です」と言う。「今はカットだけを行う低料金の店が増え、カット、シャンプー、顔剃りといった“総合調髪”を行う理容店は減っています。しかしうちは総合調髪のよさを強く訴えていきたい。元気よくサービスし、お客様に何度も足を運んでいただくのが狙いです」。

従業員はすべて若い女性だ。中学を卒業したばかりの15歳から30歳までの22人が接客にあたる。うち半数は職場近くの寮に住み込んで、朝一番から張り切って仕事に臨んでいる。挨拶は歯切れがよく、動作もきびきびしている。疲れのたまった中年男性にとってはパラダイスともいえる理容室だろう。

スローガンの内容を考えるのは「朝礼リーダー」と呼ばれる4人の女性従業員である。その中の1人、風間純代さんは「みんなと大声を出していると嫌なことを忘れます」と語る。「同僚とケンカしたとき、肩を組んで一緒にハッピー、ハッピーと連呼していたら、ケンカがバカバカしくなってきた。そして目の前にいる相手に悪いことをしたなと思ったら、自然に涙が出てきました。朝礼に出ていると一緒に働いている仲間の大切さがわかります」。

おしゃれさろんナカガワでは、朝礼のほかに月一度の日帰り旅行、盛大なクリスマス会などを通じて従業員の一体感を高めており、それが接客サービスの向上にも結びついている。

(尾関裕士=撮影)