帝国ホテルの本館17階にあるのが「インペリアルバイキング サール」。日本で最初にバイキング料理を始めたレストランである。朝礼はランチとディナーの前の15分間。サービススタッフ20名はエントランス前に集まり、朝礼に臨む。
内容は予約状況の説明、連絡事項の確認、接客用語の唱和である。予約状況の説明は、客がお祝いで来ているのか、それともビジネスの打ち合わせで来ているのかなどの顧客情報を共有するのが目的だ。そして最後は、支配人の上貞淳嗣氏のスピーチでしめくくる。
「みなさん、つねにふたつのことを守ってください。私語は慎む。また過度の笑顔も必要ありません。帝国ホテルらしいサービスを心がけてください」
朝礼の後、「帝国ホテルらしいサービスとはどういったものでしょうか」と上貞支配人に尋ねてみた。
「普通のビュッフェレストランは従業員がお客様に話しかけるということは、ほぼありません。しかし、うちではまず席までご案内する際、料理の配置、そして、ローストビーフはシェフがカットサービスをしますといったことをお伝えします。ビュッフェだからといって距離を置くのでなく、節度を持って接するのが帝国ホテルのサービスです。また、笑顔も過度にガハハと笑うのではなく、素敵な笑顔が出るようにと注意しています」
営業が始まったとたん、200席あるテーブル席はたちまち埋まってしまう。客の半数以上は女性で、目当てのものを狙って料理テーブルに小走りで向かう客もいる。スタッフはそうした客に笑顔で話しかけ、「デザートはこちらですよ」と告げると、客も落ち着く。
接客サービスの上手下手がレストランの雰囲気をよくもするし、殺伐としたものにも変えてしまう。朝礼においてサービスの充実を考えることは仕事の質の向上につながるのだ。
(尾関裕士=撮影)