全国に約300店舗を持つ、お好み焼きチェーンの「道とん堀」は、朝礼に創造力をきたえるゲームを導入している。月に1度、本部の全社員でテレビのバラエティ番組のようなゲームをやっているのだが、そういった「規格外れの社員研修をやれ」と号令をかけたのは創業社長の稲場裕幸氏である。稲場氏は47歳。1990年の創業から陣頭に立って、会社を引っ張ってきた。
「朝礼で創造力をきたえるゲームを始めたきっかけは、企業には自己変革が必要だと感じたからです。うちのようなちっぽけな会社は常に何かを創造し、挑戦を続けていなければ生き残っていけない。そう信じているからです」
稲場社長が特に危機感を感じたのは「社員が大人しくなった」ことだった。
「組織が大きくなるにつれ、みんな礼儀正しく、大人しくなった。研修をやろうと言っても、外部の会社に依頼したビジネス研修ばかりになって、社員からアイデアが出なくなったのです」
道とん堀はお好み焼きチェーンが屋台骨だが、串揚げ、ラーメンといった新業態の開発も続けている。稲場社長はお好み焼きに代わる新たな収益源を育てたいのだが、いくら「新しい店を考えろ」と命令しても、なかなか魅力的なアイデアが出てこないのだという。
「創造ゲームを始めて2年、ゲーム自体は工夫されて面白くなりました。しかし、私の望みは創造ゲームが面白くなることではない。それよりも、『そろそろ創造ゲームをやめて、こういう朝礼にしたい』と、社員から新しい提案が出てくることを期待しているのです。企業は常に変わっていかなくてはならない。重要なのは自己変革なんです」
今年、ユニクロが社内標語に掲げたのは「Change or Die(自己変革か、それとも変わらずに死を待つのか)」という壮絶な覚悟だ。道とん堀の稲場社長は朝礼を通して自己変革の大切さを訴えたいのだろう。