一所懸命働いて目標とされているように早期リタイアしてください。一度きりの人生ですから、好きなように過ごせばいいと思います。

──まったく仕事をしなくなる生活って、実際幸せなんでしょうか。

そういう人の半分以上は社会へ復帰しています。「仕事なしの生活は退屈だった」と感じる人が多いようです。

──言われてみれば、私も長い休み中には「仕事をしたい」と思うことがあります。

仕事をしなくても別に明確な目的があればいいのですが、人間は何かしら社会と結びついていないと、生きていけない動物なのでしょうね。

いくらお金があっても、毎日フレンチのフルコースでは飽きがくるでしょう?

──毎日のんびり暮らすという生活も、飽きるものでしょうか。

はい、そう思います。でも、実際にやってみないと腹落ちはしないと思います。

一度やってみて、退屈に感じたらまた仕事に戻ればいいだけのことです。仕事の代わりに打ち込める趣味を見つけて、毎日が充実していて楽しいなら、それはそれで素晴らしい人生だと思います。

──出口さんの周りに、早期リタイアされた方はいらっしゃいますか。

何人かいます。外国の方が多いですね。

──そういう人って、急に老け込むものでしょうか。

若くしてリタイアした人はそうでもないですが、定年退職した人は、急に老け込むことが多い。おそらく、それまでの規則正しい生活をしなくなるからだと思います。人間は放っておくと怠けます。

僕はライフネットの仕事は大好きですが、例えば朝起きて外が土砂降りだったら、「歩いたらズボンの裾が濡れるから、雨が止んでから行こうかな」と思ってしまいます。でも、スケジュール表に「8時半に来客」と書いてあるから起きて支度をすることができるのです。そういう決まり事がなければ、人間はどんどん怠惰な生活に戻っていきます。やることがなければ、僕はいつまでも寝ていると思います。

──ちなみに、出口さんは休日どのようにお過ごしですか?

講演などの予定がなければ、ゆっくり寝て11時ぐらいに起きてご飯を食べ、その後は髭も剃らずにひたすら好きな本を読んでいる。健康にいいはずがありません。仕事があるからこそ、健康でいられるのです。

──出口さんご自身は早期リタイアを考えませんでしたか?

読書と旅三昧の生活は理想ですね。宝くじが10回ぐらい当たればの話ですが。

Answer:止めませんが、決まり事がない生活は不健康になります

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長 

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
【関連記事】
65歳から稼ぐ人、稼げない人
関東・関西「老いて住みやすい街」ランキング
50代は「守りに入る」か「リスクを取る」か決めなさい
長生きするほど通帳が0円に近づく恐怖
損益分岐年齢は? 何歳まで生きたら「払った年金」の元が取れるのか