──給料が上がるのを見越して住宅を買い、固定費が膨らんでしまいました。妻は専業主婦です。

住宅ローンの返済は簡単には変えられませんからね。固定費の中で変えやすいのは保険です。すでに保険の見直しはされましたか?

──いえ、まだ手をつけていません。

では、毎月の保険料を確認してください。もし、月々の保険料が手取り給与の5%を超えていれば、適正な割合(3~5%)ではないので見直しが必要です。保険で安いのは共済とインターネット販売の生命保険です。

──保険の見直しはストレスがなさそうですね。

はい。生活に支障が出るものではないですから。変動費で抑えられそうなものはありますか。

──妻がオーガニック食品に凝っていて、食費が高めだと思います。

あまりにも膨大な出費であれば検討の余地はありますが、食費を削るのは難しいでしょう。病気などになったときに「あなたがあのときにオーガニックをやめるように言ったから」と、喧嘩になる可能性もあります。

──食費の見直しは諦めるべきですか?

食費を削って毎日の生活が楽しいですか? ギスギスした生活になったら、本末転倒です。何事も楽しく生きることが大前提。

──節約マニアみたいな人もいますけどね。

僕の部下にもいました。

ロンドンに赴任していたときの部下ですが、ローマに仕事で一緒に行ったとき、「週末だから、晩御飯をご馳走するよ。7時にホテルで合流しよう」と言いました。

ローマは初めてとのことだったので、僕はお勧めの観光地を教え、地図も渡しました。その夜晩御飯で合流して「ローマはどうだった?」と聞くと、「コロッセオは大きいですね」と。何に感動したかを尋ねると「いや、コロッセオを一周しただけです。入場料がもったいないので」。パンテオンの感想を求めると「これも一周しました」。それならばと、サン・ピエトロ大聖堂に行ったかを聞くと、「行きました。入場料がもったいないので教会だけ入って、美術館へは入りませんでしたが」と言うのです。

──えー、せっかくローマにいるのにもったいない……。

彼のようにどこまでケチケチできるか、面白がることができるならそれも立派な生き方です。そういうタイプでなければ、パートナーに「ちょっとだけ働いてみるのはどう?」と言ってみてはどうですか。

昔は「パートナーを養うのが甲斐性」などと言われていましたが、今やもう古くさい話です。

Answer:「働いてみない?」と、まずはパートナーに打診してみては

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長 

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
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