日本の組織に対して感じるのは、人を組織にアダプトさせるばかりで、逆に組織を人にアダプトさせる発想がないことです。これだけダイバーシティやグローバル化が進んでいるにもかかわらず、多様な人材をどう受け入れるかという発想が、今なお多くの日本企業には欠けているように思います。ヤフーが新卒一括採用を廃止して話題になりましたが、新卒一括採用からこぼれてしまうような優秀な人材を獲得できると判断したからでしょう。

ただ、日本の新卒採用の状況が今後、著しく変わることはないと思われます。日本企業の人事担当者に話を聞くと、新卒一括採用はあまりにも当たり前のことで、それを見直すなど考えたこともなかったといいます。

とはいえ、米国のように離職率が非常に高く、労働市場の流動化が激しい状態が理想的かといえば、そんなことはありません。最適なポイントが、日本と米国の間のどこかにあるはずです。

最適なポイントはどこにあるのか

例えば、流通大手のイオンでは、通年採用を実施しており、入社式は4月と10月の年2回開催しています。10月の式の出席人数の割合は4月開催の約10分の1にすぎませんが、春入社と変わらない形で迎えることによって、外国の学生や留学していた学生を受け入れやすくなりました。このように4月採用にこだわらず、優秀な人材を確保する仕組みを設けた企業のほうが、今後は強くなると思います。新卒採用のダイバーシティを進めるためにも、受け入れ体制を柔軟にすべきでしょう。

日本的雇用慣行が成立した時代、日本企業の理想の人材像は、会社に100%コミットして、いつでも働いてくれる日本人男性でした。しかし、これから人材不足がさらに深刻化する中で、女性や外国人、高齢者など、多様な人材を活用していくためには、内部労働市場だけでなく、外部労働市場を活性化させていくことが必要です。

(増田忠英=構成 時事通信フォト=写真)
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