2015年は“コーポレートガバナンス元年”といわれ、5月には改正会社法が施行、6月には東京証券取引所と金融庁によるコーポレートガバナンス・コードの適用が開始されました。コーポレートガバナンスの強化を目的とした一連の改革は、果たして企業の力を高めるのでしょうか。
企業の力とは、「活力」と「健全さ」です。活力とは「なすべきことをする」ことであり、健全さとは「なすべからざることをしない」ことです。例えば、経営者が自社の存続・発展のために力を尽くすことは活力であり、利益を確保するための不正な取引や粉飾決算などをしないことは健全さです。この両方を高めていくことが、企業や経営者には求められます。
今回のガバナンス改革が活力や健全さを高めるかというと、「あまり期待できないのでは?」というのが私の意見です。
健全さの面では、よくいわれることですが、いくら取締役会の独立性を高めて監督体制を強化しても、経営者がその気になれば、それを形骸化させることは必ずしも困難ではないでしょう。
コーポレートガバナンスの歴史は、不祥事と規制強化のいたちごっこであり、ガバナンスを強化したからといって健全さが確保されるわけではないことは、周知の事実といえます。例えば、アメリカで01年にエンロン事件(粉飾決算による経営破綻)が起きたときは、翌年に内部統制の強化を目的としたSOX法ができましたが、その後も不祥事は絶えません。