パンをおいしく焼けるのはもちろん、冷めた揚げ物やギョーザを温めると出来立てのようによみがえると話題の「ヘルシオ グリエ」。この商品は、とある“反省”を元に生まれたという。「高級トースターではない」というその心は……?【記事最終ページに商品企画書を掲載】

昨年(2016年)、家電系ライターの間でかなり話題になっていたのがシャープの「ヘルシオ グリエ(AX-H1)」。トースターと同じようにパンを短時間でおいしく焼けるだけでなく(食パンはもちろん、特にクロワッサンの温めは絶品だ)、冷めてしまった天ぷらやとんかつ、ギョーザなどのおかずを「外はサクッと、中はジューシー」に仕上げる再加熱も得意技である。

こう書くと、2015年のヒット家電である高級トースター「バルミューダ ザ・トースター」を連想する人も多いだろう。ヘルシオ グリエの見た目は確かに、”赤い高級トースター”といった趣きである。

しかしこの商品はトースターとして開発されたものではなく、ある“反省”を元に生まれたものだという。どのようなコンセプトで企画されたものなのか、ヘルシオ グリエの企画担当者に取材した。

■シャープ「ヘルシオ グリエ」の気になるポイント
・トースターに見えるが、トースターではない?
・レトロなフォルムとビビッドなカラー。ターゲット層は?
・なぜパンはふっくら、おかずはサックリジューシーに加熱できるのか
・余分な油を落としてヘルシーに加熱
・「ヘルシオ」シリーズの課題とは?

オーブンレンジは「電子レンジ」機能以外使われていない?

シャープ 健康・環境システム事業本部 スモールアプライアンス事業部 商品企画部の田村友樹氏は、ヘルシオ グリエ発売の最終決定を役員に仰ぐため、2015年12月に用意したプレゼン資料を見せてくれた。

同じ年の6月にバルミューダが「バルミューダ ザ・トースター」を発売したことから「後追い」などと勘違いされることもあったとのことだが、「トースターを作ろうと思ったわけでは全然ありません」と田村氏は語る。

「ヘルシオ」はシャープのウォーターオーブンのブランドで、ヘルシオシリーズ初の商品が、2004年9月に発売した「ウォーターオーブン ヘルシオ AX-HC1」である。一般消費者向けとして初めて「過熱水蒸気調理」が家電製品に採用された。

過熱水蒸気とは、通常は約100度までしか温度が上がらない水蒸気をさらに加熱し、200度や250度といった高温にすることで「水で焼く」ことを実現したもの。過熱水蒸気が食材の中まで入り込むことで、食材をみずみずしく保ちつつ、食材の中にある余計な塩分や油分を流すことから、同社は「健康調理」を打ち出し始めて現在に至る。「ヘルシオ=健康調理」というイメージは多くの人に浸透しているのではないだろうか。

しかし一方で、大きな悩みがあった。

「ウォーターオーブン ヘルシオを12年以上やっていますが、過熱水蒸気とはそもそも何なのか理解していただけない。もっと言えば、ウォーターオーブンを買っていただいている方でも、電子レンジの温め機能しか使っていない人が多い、というのが、我々が調査している中で分かってきたのです」(田村氏)