冷凍、冷蔵、常温の食材が混在していても“適当に”調理できる
発売から順調な滑り出しとなったヘルシオ グリエだが、製品企画の目的は2004年の初号機発売時に「21世紀調理」と名付けた水蒸気調理を一般的な調理方法として普及させることだ。そういう意味では、まだまだ道のりは険しいのかもしれない。
シャープは2013年に「高機能だけどコンパクトなモデルが欲しい」という“アクティブシニア向け”モデルの「ヘルシオ AX-SA1」を発売している。このコンセプトは今でも続いているが、倉庫内容量30Lの最上位モデルに比べて26Lと、ほとんど違いはない。単機能電子レンジに近いサイズの18Lモデルは、商品ラインナップの中ではシングル層や夫婦2人向けのエントリーモデルという位置付けに変化はない。容量が大きくなるほど熱効率が悪くなるため、昨今増えている少人数世帯の「時短調理」というニーズを満たすのは難しくなってしまう。そこをどう解決し、ラインアップをそろえていくのかは今後の大きな課題だろう。
ただ、シャープは2015年発売の「AX-XP200」で冷凍、冷蔵、常温の食材が混在していても自動調理できる「まかせて調理」機能を初搭載し、「レシピを見なくても適当に調理できる」という新基軸を生み出した。冷凍、冷蔵、常温の食材が混在していても、均一に熱を通せるというのが過熱水蒸気調理の大きな特徴で、それはヘルシオ グリエにも踏襲されている。
「オーブンレンジの高級モデルはメーカーエゴでいろいろな機能を付けていますが、自動といいながらクックブックの指示に従わないとできません。そこでAX-XP200はハードルを下げにいきました。初めはいろいろな機能を使ってみるけど、結局電子レンジとしてしか使っていないという事実を公表したくはなかったのですが、3年前にそれを言うことを決めて、適当に食材を並べてもボタン1つで鍋やフライパンの感覚で使える機能を搭載しました。この機能のおかげでお客さんの層や、使われる人が広がってきましたが、まだまだ十分ではありません。今使われている実態と、業界が今まで作ってきたラインアップが合っていない気はするので、これから変えていかなければいけないと思っています」
過熱水蒸気は「鈍感」
田村氏は、電子レンジなどとは違う過熱水蒸気調理の魅力についてこう語る。
「過熱水蒸気は結構“鈍感”なんですよ。電子レンジは少しの時間の違いで失敗してしまいます。だからこそ食材の量などを指定しなければならないのですが、過熱水蒸気は“適当”でも失敗しにくい、寛容な加熱方式なんです。蒸し器で長時間食べ物を蒸しっぱなしにしても、あまり失敗しないですよね。あれと同じです。ヘルシオグリエを実際に使っていただくと、パンも焦げないし、適当に使っても案外失敗しないというのが分かると思います。これは新しい加熱方式で過熱水蒸気調理に慣れていただくための機械です。ぜひ皆さんに慣れて使いこなしていただきたいですね」(田村氏)