茶葉を挽き、お茶を点てることができるシャープのお茶メーカー「ヘルシオ お茶プレッソ」が、好調な出足をみせている。2014年4月25日の発売以降、品不足状態が続き、発売直後にも関わらず、5月からは当初計画の月産4000台体制を、5000台体制へと引き上げた。世界初となるお茶メーカーはなぜ生まれたのか。そして、そこにはどんな思いが込められているのか。

茶葉が口に残らない20ミクロンの粒度

田村友樹氏(シャープ 健康・環境システム事業本部調理システム事業部新規事業推進プロジェクトチームチーフ)は、ある日実家を訪れた。

奈良県に生まれた田村氏は、子供のころからお茶をよく飲んだ。奈良県は、静岡県、京都府に次いで、3番目にお茶の消費量が多い県だ。

実家でお茶メーカーの開発について話をすると、父が部屋の奥から、使っていない小さな石臼を持ちだしてきた。茶葉を挽くために購入したものだという。だが、家庭で茶葉を挽く製品の多くは、残念ながらお茶屋で挽くような細かい茶葉にはならない。父はうまく茶葉が挽けないことを理由に石臼を使わなくなってしまったという。

茶葉を細かく挽くには、臼が重なりあう部分に刻まれた模様が重要な意味を持つ。試作部品の多くは、この模様の試作に費やされたといっていい。「これまでにノウハウの蓄積がない分野。シミュレーションだけでは結果がでずに、実際に試作品を作ってみて検証を繰り返した」という。実際、模様を少し変えるだけで、粒度が一気に変わるということも体験した。

この頃、田村氏は、お茶屋やお茶農家への訪問を開始していた。これは、田村氏が製品づくりに際して必ず取り入れる手法だ。ヘルシオ炊飯器の時にも農家を回り、実際に田植えや収穫まで行い、米の特徴を学んだ。

お茶屋では、実際にお茶を挽くところを見学し、石臼の模様についても学習し、さらにどれぐらいのきめ細かさに挽けばいいのか、その時の回転数や温度などはどれぐらいが最適なのかといったことについても学んだ。

お茶プレッソで作った粉末茶。20ミクロン以下という粒度を実現している

「実際にお茶を飲んでみると、30ミクロンを切れば茶葉が口に残らない。そこでまずは20ミクロンの粒度を目指した」

臼に刻まれる模様は製品発売の直前まで改良が加えられた。その結果、カタログに表示された値は20ミクロンとなっているが、実際の製品では10ミクロン近いところまで粒度を細かくできた。

「お茶屋さんに、製品版でお茶を飲んでいただいた際には、粒度がさらに細かくなって、より美味しいお茶になっていることを評価していただいた」と、田村氏は胸を張る。