茶葉を挽き、お茶を点てることができるシャープのお茶メーカー「ヘルシオ お茶プレッソ」が、好調な出足をみせている。2014年4月25日の発売以降、品不足状態が続き、発売直後にも関わらず、5月からは当初計画の月産4000台体制を、5000台体制へと引き上げた。世界初となるお茶メーカーはなぜ生まれたのか。そして、そこにはどんな思いが込められているのか。
なぜ開発途中で製品企画を見直したのか
「これまでの考え方は全部封印してほしい。もう一度、ゼロから製品企画をスタートする」――。
2013年夏、プロジェクトリーダーを務めるシャープ 健康・環境システム事業本部調理システム事業部新規事業推進プロジェクトチームチーフの田村友樹氏は、企画、開発、デザインを担当するメンバーを前にこう言い放った。このプロジェクトチームは、約1年前から、世界初となるお茶メーカーの開発を開始していた。
目標としていた発売時期まで、あと1年を切っていた時期の田村氏の発言にプロジェクトメンバーは戸惑った。もちろん、その場では多くの反対意見が出た。なぜこの時期に製品企画を大幅に見直さなくてはならないのか。なぜこれまでの路線では製品化できないのか。
だが、田村氏は、その姿勢を崩そうとはしなかった。
この会議を招集する直前まで行われていた幹部向け製品企画の説明の場で、これまでのコンセプトによる製品づくりに、限界を感じざるを得なかったからだ。
幹部から相次いで出た意見は、「これでコーヒーは入れられないのか」、「コーヒーメーカーが各社から登場しているなかで、2万円を超えるお茶専用機が売れるのか」といった否定的なものが中心だった。
比較対象とされるのはコーヒーメーカー。それは、当時のデザインがコーヒーメーカーを強く意識したものであったこと、カフェ感覚でお茶を飲もうという利用提案が中心となった製品企画であったことも影響していた。