当時、パナソニックが販売していたスチーマーは、人気が一巡していた。美容事業部門としては、次期スチーマーの開発もテーマの一つとして俎上に載っていた。「寝ながら」のコンセプト+新しいスチーマーという流れは、当然のように決まった。
しかし、言うは易く行うは難し、でもあった。
「実際に、寝ながら使った場合にどんな問題があるのかを検証しなければなりません。そこで、店で売られているスチーマーや加湿器などを寝ながら使ってみたんです。すると、スチームの温度が高くて熱かったり、息苦しかったり、スチーム発生音が気になったりといろいろ問題があることがわかりました」(太田さん)“寝ながら”美容のスチーマーの商品化の企画は、担当役員の納得を得るのも簡単ではなかった。
「コンセプトはいい。しかし、ユーザーにどうやって使わせるのか。寝ているときに使う際の安全確保は大丈夫なのか。寝返りをうったときにも効果があるのか。ユーザーは本当にそれを求めているのか、などといろいろ質問されました」(太田さん)
コンセプトはよくても、在庫の山になったら困る。担当役員にしてみれば、慎重に判断するのは当然のことだ。
それでもチャレンジしたい。開発メンバーたちの気持ちが落ち込むことはなかった。担当役員に対しては、太田さん自らがたびたび説得を試みて、「美容効果があれば、製品化する」ことに決まった。