北海道では、全道人口のおよそ半分が札幌市周辺に集中している。旭川、函館、帯広、釧路といった中核都市はともかく、それ以外の都市は、北海道経済の長期低迷を背景として衰退が著しい。
「病院と商業施設は住む人の暮らしを支える要ですが、スーパーが一軒もない町も少なくない。その不便さが過疎化の止まらない一因にもなっています」と、専務理事の山口敏文さんは指摘する。
現在、コープさっぽろは全道で130万人の組合員を擁し、25市13町に95店舗を展開している。しかし、過疎・高齢化が進む町が多い北海道の現状で、どのような経営・店舗展開をすべきかが課題として浮上してきた。
そして、人口1万~2万人規模、商業施設が整っておらず、日常の買い物に不便をきたしている町で、出店可能な地域を探した。すると25の地域が浮かび上がり、その一つが赤平市だったのだ。
「私どもには、5000人程度の小さな商圏でも成り立っている店が、実はいくつもあるんです。成り立っているのは、競合店がないからです」と山口さん。
コープさっぽろは、赤平店を皮切りに、今後も小規模市や町村部への出店を進める予定だが、その成立条件は、競合店がないか、地域内の一番店になること。商圏が小さいがゆえに「複数店舗の存立は難しい」と見ているのだ。
赤平には同規模の競合店が一店あるものの、「地域に密着したきめ細かいサービスで、圧倒的な支持を得るよう工夫すれば十分にいける。3年目には黒字にできる」と大見さんは言う。隣の市に買い物に行く商圏外流出の購買層53%のうち2割を止められれば、商売を存続可能と見ているのだ。そんな考えの裏側には、次のような“発想の転換”が存在している。
「大都市部は地価が高いし、競争も激しい。投資対効果で見れば必ずしも有利とはいえません。商圏が小さい地方でも、そこでオンリーワンになれば、安定して事業が進められます。投資額が抑えられる分、回収もしやすいのです」
すでに、あかびら店では高齢者の多い地域性に合わせたさまざまな取り組みが始まっている。
野菜、刺身、惣菜などは高齢者の単身世帯や二人世帯の人でも求めやすいように小分けされ、これがよく売れている。買い溜めした重い荷物を、高齢者に限って宅配するサービスも週に2日ある。
「北海道では、過疎化・高齢化の視点を外してマーケットを考えられないが、それはけっして北海道だけの特別な事情ではないはずです」と大見さんは続ける。
「人口減社会は遠からず、必ず来る。そこでは右肩上がりを基調とした従来のビジネスモデルは通用しなくなります。収益の向上をひたすら目指すという発想より、どの収益レベルなら事業が維持でき、継続できるかという発想のほうが大切になると私は思うのです」
人口減社会のビジネスモデルはまだない。しかし、それと向き合うことで、これまでにない新しいモデルを生み出せる。今回の再出店は、そこに見どころがある。