ドンドンダウン・オン・ウェンズデイ(以下、ドンドンダウン)。新規事業で、この名前を冠したリサイクル古着屋チェーンを始めると聞いたヘイプのスタッフたちは、一瞬わが耳を疑った。「なんじゃ、そりゃ」「ダサっ」と露骨に顔をしかめる者さえいた。
「アパレル業界で働く人たちは、カッコ悪いのは絶対嫌。『ドンドンダウンに異動? 俺はもう駄目だ』と左遷と思われていた時期もありました。それが順調に業績を伸ばして店舗を増やすと、社内の雰囲気ががらりと変わったんです」
2005年、青森県八戸市にドンドンダウン1号店をオープンした頃の様子を、岡本昭史(あきふみ)社長は笑いながらこう振り返った。
毎週水曜日に商品価格を1000円ずつ値下げする、というビジネスモデルそのままの名を冠した古着チェーンが大ヒット。09年3月期の売上高は9億2000万円と前期比約75%増。今期は13億円を見込む。直営12、FC12の計24店を、今年度中に40店強まで増やす計画だ。
起業のきっかけは、約20年前にさかのぼる。まだ19歳だった岡本社長が二輪のプロライダーを目指して渡米したことだった。
1年半ほどで夢を断念するが、現地でリサイクルの文化が生活に根付いていると知った。日本から持参した歌舞伎の絵入りTシャツなどをフリーマーケットで売り、生活費に充てたこともあった。このときの経験を基に、帰国後にヴィンテージものの輸入を始める。
爆発的な古着ブームが始まった頃であり、1960年代のリーバイスのジーンズに数十万円の値が付いて飛ぶように売れた。ヴィンテージ人気が下火になると、ストリートファッションへ軸足を移す。さらに現在の古着ビジネスである。
「よく誤解されますが、欧米から輸入したファッション性の高い古着を扱うのと、お客さんから直接古着を買い取って店頭に並べる事業はまったく異なるものです。われわれは異業種からの参入組だと思っています」と岡本社長はいう。
日本国内の古着市場は、推定で3000億~4000億円規模といわれ、数年後には2倍になると予想される。
元来、日本人は自分が着た服を捨てたり、他人に売ることに抵抗を感じる国民だといわれる。実際、多くの古着は利用されず、タンスの肥やしになっている。
欧米では服の再利用率は50%、隣の韓国では80%といわれるが、日本ではわずか数%にとどまるという根拠にもされてきた。
だが、若者を中心に古着への抵抗も薄れたようだ。不況で衣類にお金をかけられない状況やエコに関する意識の高まりもある。ただ、こうした外部要因だけでドンドンダウンが成長したわけではない。
生まれも育ちも東京という岡本社長だが、早くから競合相手の少ない東北地方でのリサイクル古着の店舗展開を優先。本社も岩手県盛岡市に置いた。
※雑誌掲載当時