「アパレル業界でいろいろな業態を試しましたが、トレンドに左右されることが多かった。リサイクル古着はトレンドに左右されず、すべての人に喜んでもらえます」

「でも、どんどん値下げするのはやっぱり怖いですよ」と岡本社長は苦笑する。

「でも、どんどん値下げするのはやっぱり怖いですよ」と岡本社長は苦笑する。

中古品ビジネスの生命線。それは買い取りをする際の査定にある。後発のブックオフが古書業界の盟主になれたのも、買い取りに秘密があると指摘する声は多い。

もっとも、書籍には新刊で売られたときの価格が表示されているが、衣類に価格は表示されていない。世の中には数えきれないほどのブランドが存在し、すべての流行を把握するのも困難である。

「査定を深掘りしていくときりがないし、それではチェーン展開はできません。指定ブランドだけは単品で査定、あとは店頭で売れるものと売りにくいもの。この2つにしか分けません」(岡本社長)

売りやすいものは1キロ500円、売りにくいもの・汚れがあるもの・ダメージがあるものは同30円で、下着を除いてすべて買い取る。通常、リサイクルショップは売れないようなものは引き取ろうとはしない。この違いは大きい。

すべて買い取ると膨大な量だが、ドンドンダウンでは幅広い客層を取り込むために方針を変えない。またこの査定方法なら、誰でも1週間でマスターできる。

買い取り価格は、毎週月曜と木曜の2日間は通常の1.5倍となるが、そこにも秘密がある。普段でも土曜・日曜は集客が多いが、金曜・土曜・日曜、土曜・日曜・月曜と忙しい日が3日間も続くようだと、スタッフの負担も大きい。

買い取り価格を割り増しに設定することで、客の来店日を分散できる。月曜に大量に買い入れた古着は火曜を使って店頭に並べ、価格が下がって客が増える水曜に売る。翌木曜に大量に買い入れた古着は金曜を使って並べ、週末に向けて売っていくというパターンだ。

「店名の終わりにウェンズデーと付けたのは、商売はネーミングが肝と思ったからです。『セブン-イレブン』『アスクル』もビジネスモデルを名前で表している。クチコミの際に力になります」

買い取り希望の客は査定を待つ間、商品を手にとったりして時間をつぶす。これが古着との出合いにつながり、次回来店の動機となる。アパレルショップでの成功体験を基に編み出した、毎週水曜に1000円値下げする「逆オークションシステム」が大きな特徴だ。

「値下がり日を特定することで、お客様のスケジュールに入れられ来店する動機になりやすい。毎週値下げするため、自分自身が買ってもいいと思える価格で買える。商品の回転が速くなるので、商品の鮮度も新鮮に保たれます」

野菜柄のタグは「古着は鮮度が命」という哲学の象徴。値下げを水曜日としたのにも理由がある。「土~月はスタッフの負担が大きいし、火・木の英訳語は“ウェンズデイ”ほど知られていない(笑)」(岡本社長)。

野菜柄のタグは「古着は鮮度が命」という哲学の象徴。値下げを水曜日としたのにも理由がある。「土~月はスタッフの負担が大きいし、火・木の英訳語は“ウェンズデイ”ほど知られていない(笑)」(岡本社長)。

普通の値札を付けない代わりに、店頭の商品には、だいこん、かぼちゃ等、全部で12種類の「野菜タグ」のいずれかが付けられる。

いったん取り付けられたタグは外さない。たとえば今週3000円だったバナナのタグが付いた商品は、そのまま来週水曜に2000円に、さらに再来週水曜には1000円に、最終的に100円になるまで下がり続ける。「待つか決めるか取られるか」を客自身に決めさせることで、ドキドキ感ワクワク感を演出できるのだ。

100円まで値下げしても売れ残った商品は廃棄せず、買い取って店頭に出せなかったものと一緒に東南アジアやアフリカ諸国に輸出、現地で役立ててもらっている。

もっとも、不況下でも有望市場といわれるだけに、古着ビジネスへの参入を狙う企業は少なくない。

「古着という商材が海外でも展開しやすいのは事実ですが、まずは国内市場を固めることが先決。『古着を売るならドンドンダウン』と言われるまで、わき目も振らずにやっていきます」

古着ビジネスで日本一を目指すといい切る岡本社長は、店舗展開を加速させる。
※雑誌掲載当時

(初沢亜利=撮影)