いつまでも元気で過ごすためには、胃腸を整えることが重要だ。北里大学医学部の比企直樹教授は「中高年によく見られる症状が『逆流性食道炎』だが、近年は20代の患者も増えている。食習慣の欧米化にともなって脂っこい食べ物の摂取が増えたほかに、最近は別の原因も考えられる」という――。

※本稿は、比企直樹『100年食べられる胃』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

なぜ? 20代も「逆流防止弁」が緩くなっている

一口に、胃の痛み、不快感といっても症状も原因もさまざまですが、胸が焼けるように痛む場合は「逆流性食道炎」が疑われます。

逆流性食道炎とは、胃酸を含む胃の内容物などが食道へ逆流することによって、胸やけや呑酸症状(酸っぱいものや苦いものが込み上げてくるような症状)などを引き起こす病気です。かつては中高年の病気だと思われていましたが、昨今は20代の患者さんも増えています。

胃酸などの逆流は、食べた物が食道から胃に入る入り口にある“逆流防止弁”が破綻しゆるんでしまうことで起こります。食道の壁を荒らすことで症状を引き起こしますが、逆流防止弁をゆるませてしまうのは、喫煙や食の欧米化が原因であると言われています。

よく知られている症状は、胸やけや呑酸ですが、ほかにも次のような症状があります。

「狭心症のような胸痛」も逆流のサイン

〈みぞおち・胸・背中の痛み〉

逆流防止弁がある噴門部はちょうど「みぞおち」あたりです。逆流性食道炎でこの部分に炎症が起きた場合には、みぞおち、胸、背中に痛みを感じることがあります。また、人によっては狭心症のように、胸が締め付けられるように痛む場合もあるようです。

胸を押さえる男性
写真=iStock.com/Hammarby Studios
※写真はイメージです
〈喉がいがらっぽい、咳が出る、声がかすれる〉

逆流した胃酸が喉に炎症を起こすと、喉がいがらっぽくなったり、頻繁に咳が出たり、喉が痛くないのに声がかすれたりします。

〈喉・胸に何かがつかえているように感じる〉

喉や胸に何かがつまっている、あるいはデキモノがあるかのように、飲食物がうまく落ちて行かない感じがします。

ひと言で逆流性食道炎と言っても、その症状は、胸が焼けるような痛みに限らず、いくつもの症状があるのです。