「こういう製品を待っていたんだよ」
2014年4月25日、田村氏は、都内の家電量販店店頭にいた。
この日は、ヘルシオお茶プレッソの発売日だ。来店したアクティブシニアの一人は、お茶プレッソを購入したくて、発売日に来店した。
「こういう製品を待っていたんだよ」
その言葉に田村氏はこれまでの苦労が報われた気がした。そして、お茶屋やお茶農家などからの評価が高いことも、田村氏にとっては心強い。
お茶プレッソがターゲットとしているのは、これまで急須でお茶を飲んでいたシニア層。ここでは急須で飲む以上に栄養成分を摂取できる健康を訴求する。カテキンは、急須で入れるよりも1.9倍も多いという。そして、家に急須がないという若年層もターゲットだ。コンビニエンスストアには、ペットボトル入りのお茶が棚を占め、抹茶入りの菓子やアイスなども数多い。若年層は、急須を持っていなくてもお茶離れをしてはいない。お茶は身近なものとして触れている。だから、急須を持たない若年層もターゲットとなるのだ。
「この製品をきっかけにして、お茶に注目が集まり、お茶の消費量が増加することを期待したい。お茶の産業にどれぐらい貢献できるのかといったことも考えていきたい」と、田村氏は語る。
発売直後の5月2日には、静岡県島田市のお茶の郷博物館でお茶プレッソの試飲会を開いた。こうしたお茶の産業とのコラボレーションも活発化させたいという。
お茶プレッソのカタログには、「お手本は茶道です」と書かれている。
シャープの創業者である早川徳次氏は、茶道を嗜んだことでも知られる。
「もし、お茶プレッソを、創業者に見せたら、なんと答えるか」
ちょっと難しい質問を田村氏に投げてみた。
田村氏は即答してみせた。
「これはシャープらしい製品だ。きっと真似される製品になるよ。そういってくれるのでは」。そして、「コーヒーメーカーを持って行ったら怒られていたでしょうね」とも付け加えた。
世界初のお茶メーカーは、まさに、シャープらしい製品として、世の中に登場したといえそうだ。