目の前にある食べ物や飲み物は、はたして体にいいのか、悪いのか。ボストン在住の医師・大西睦子先生がハーバード大学での研究や欧米の最新論文などの根拠に基づき“食の神話”を大検証します。今回は「魚」。魚は肉に比べヘルシーといわれ、脂肪も良質です。一方で、魚に含まれる汚染物質を懸念する声も絶えません。食べ続けても健康に害はないのでしょうか――。

毎日マグロを食べても安心?

魚は「肉に比べヘルシー」といわれます。注目したいのが良質な脂肪。肉類や乳製品には、中性脂肪などを増加させる飽和脂肪酸が多く含まれていますが、魚はEPAやDHAに代表されるようなオメガ3脂肪酸の値が高いのが特徴です。

ハーバード公衆衛生大学院のモツァファーリアン教授とリム教授は2006年、20の研究(参加者総数は数十万人)を分析し、サケ、ニシン、サバ、イワシなど脂肪分の多い魚を85gずつ、週に1~2回食べると、心臓病による死亡リスクが36%低減すると結論づけています。

一方、魚に含まれる汚染物質を懸念する声も絶えません。PCBなど12の物質の削減や廃絶等に向けた「残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約」は04年、締約国数が50に達しました。

しかし、POPsは意図せず生成されることがあるほか、自然に分解されづらく、環境中に長く留まるため、放置された廃棄物から漏出し、人知れず長距離移動して広がっている可能性もあります。しかも海外ではいまだにPOPsを使用している国もあるのです。