目の前にある食べ物や飲み物は、はたして体にいいのか、悪いのか。ボストン在住の医師・大西睦子先生がハーバード大学での研究や欧米の最新論文などの根拠に基づき“食の神話”を大検証します。今回は「バターとマーガリン」。米国では脂質の摂取方法に関して「脂質闘争」と呼ばれる議論が続いています。バターとマーガリン、結局どちらがいいのでしょうか――。

「脂質闘争」と呼ばれる議論

米国では長きにわたり、バターなどの脂質の健康的な摂取方法に関して「脂質闘争」と呼ばれる議論が続いています。まずは、脂質を大きく3つに分類してみましょう。

「飽和脂肪酸」は、バターやラードなど肉類や乳製品の動物性脂肪に多く含まれます。

「不飽和脂肪酸」はオリーブ油に多く含まれる一価不飽和脂肪酸と、魚の油やなたね油、えごま油、大豆油、コーン油などに多く含まれる多価不飽和脂肪酸があります。「トランス脂肪酸」は、マーガリン、ファストフード、インスタント食品などに含まれています。

脂質が米国人の健康の敵となったのは1961年。ミネソタ大学のアンセル・キーズ博士が雑誌『TIME』で、「飽和脂肪酸を多く摂取する国で、心疾患に苦しむ人が多い」と結論づけたのです。

バターに代わるヘルシーな脂質として賞賛されたのは、トランス脂肪酸を多く含むマーガリンやショートニングでした。植物性の油を元にしている点が受け入れられた理由です。