文にわざと「雑味」を混ぜると人を騙せる

ワルたちの発想はおそらく次のようなものと考えられる。

ある企業の取引先の名簿情報が手に入った。年末で企業もバタバタしている。新年会をもとに何か詐欺ができないかと考える。これまでに個人の消費者をターゲットにした電子マネーの詐欺には成功している。それをビジネスに転用できないか。異なる手法を組み合わせて、今回の手口が生み出されたのではないか。

※写真はイメージです

これは、料理にも似ている。企業名簿を素材とすれば、それにどんな味付けをすればよいか、詐欺の手口をいろいろと加えてみながら新たな詐欺の一品を仕上げたといってよい。

「具材と味付け」の工夫は、まっとうなビジネスでもいえることだろう。

私たちのもとには日々さまざまな情報がやってくる。しかし情報はそのままだとほとんど何の価値もないものだが、そこに、自分たちの持つノウハウを加えてみる。時には刻んでみて、時にはジューサーの中にいれてかき混ぜてみる。それにより、新たな形のアプローチ方法が生み出されるなど利用価値が生まれてくることだろう。

“料理”のポイントは、いかに相手に「美味い!」と感じさせられるかにある。味には甘み、苦み、酸っぱさ、塩味があるが、最も大事になってくるのは、“うま味”の成分である。

今回の詐欺文書でいえば、3万円ほどのカンパをすれば、社長とのパイプができて、相手会社からの恩義を感じてもらえる。とすれば、今後、取引先との仕事が増えるかもしれないという“うま味”がある。それゆえに、応じてしまいがちになる。
 
ビジネスでも、いかに“うま味”を相手に感じさせるかによって、実績は変わってくる。そこで、営業先や社内で、うま味を出すような話の内容になっているかを考えてみる。キーポイントになるのが、雑味成分だ。