トランプ大統領の「米国第一エネルギー計画」
1月20日にトランプ大統領が誕生した。トランプ政権に対して、世界は不安と期待を持って見つめている。なぜなら、世界最大の大国のリーダーが進める政策が各国の経済に与える影響は小さくないからだ。トランプ大統領の基本的な姿勢は「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」だ。そのうちエネルギー戦略については、選挙期間中に公表されている「米国第一エネルギー計画」に端的に表れており、日本の発電事情にも波及が予測される。
同計画では、アメリカはエネルギー自給を確立し、OPEC(石油輸出国機構)やイランなど敵対的な国々からのエネルギー輸入の排除を打ち出した。そのために、シェール資源(シェールガスおよびオイル)や石油、天然ガス、石炭といった化石燃料を開発して50兆ドル(約5500兆円)の価値を作るという。これはある意味で、米国が石油の覇権をOPECから奪取する宣言といってもいい。
昨年11月末、OPECとロシアなど非加盟の主要産油国が8年ぶりに減産合意。1日の生産量を120万バレルほど減らすことで、上限を3250万~3300万バレルにするとした。これをきっかけにニューヨーク市場などでは原油価格が1バレル=50ドルを回復。引き続き2017年のマーケットも原油高で推移していくものと見られていた。
このことは、原油輸入を海外とりわけ中東に80%以上依存する日本にとっては頭の痛い問題である。なにしろ、エネルギー自給率が6%と低く、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故が影響し、原子力発電の稼働がほぼ止まっている。当面は、液化天然ガス(LNG)や石炭、石油を燃料として使用する火力発電に頼らざるを得ず、それらへの依存度は約9割に達している。
原油価格の上昇は、やはり中東への依存度が30%のLNGの価格も押し上げる役割を果たす。いまや、日本の発電における電源構成はLNGと石炭で全体の4分の3を占める。現在でも、調達コストが年間7兆円を超えており、原発の再稼働が思うように進まないなかにあっては、不安材料として残る。