ポスト・グローバル時代のエネルギー安全保障

トランプ大統領が示したように、アメリカがシェールガスなどの増産に踏み切ったならば、状況は大きく変わってくる。実際、今年に入ってアメリカ産のシェールガスを積んだ大型タンカーが新潟県上越市の直江津港に到着。日本初輸入ということで、今後の火力発電燃料等としての安定的な調達先として期待が寄せられた。

ところがトランプ大統領は、就任後数日で正式にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)から離脱する大統領令に署名した。アメリカは現在、天然ガス取引を含めたFTA(自由貿易協定)を締結している国へ輸出許可を与えている。日本はFTA締結国ではないので、TPPの発効により、FTA締結国と同等に扱われるようになることで、エネルギー関連事業者は許認可リスクに悩まされず安定かつ継続的な調達を可能にしたいところだったが、これは当面無理となってしまう。

一方で、昨年12月に山口県長門市で行われた安倍首相とプーチン大統領の日ロ首脳会談で動きがあった。そこでは、日ロ経済協力において日本側が過去最大規模となる3000億円を投融資することが決まった。エネルギー分野では、天然ガスや石油などロシアの地下資源開発で両国が協力していく。

また、民間レベルでも三井物産と三菱商事が参加するサハリン沖の天然ガス・石油開発「サハリン2」の生産設備増強が確認されている。このメリットは、ロシアからのパイプライン輸送が可能なため、液化する必要がなく低価格で調達できることだ。うまくいけば、電力業界にとっても福音だ。

とはいえ、これらはあくまでも火力発電での話。安定的な電力供給を考えれば、一昨年7月に経済産業省が発表した「長期エネルギー需給見通し」が示したエネルギーミックスを念頭に置く必要がある。そこでは、原子力と太陽光や風力といった再生可能エネルギーをいずれも20%台前半まで高め、LNGや石炭など化石燃料を50%台半ばとしている。

いずれにしても、現在の原発の稼働状況や再エネ発電プラントの普及度合いからすれば、かなりむずかしい目標といっていいだろう。しかしながら、資源小国である日本は、戦後の石炭時代を経て、石油、そして原子力とエネルギーミックスを駆使して生き延びてきたのも事実だ。グローバルからポスト・グローバルの時代に移るなか、エネルギーの安全保障には国としての明確なビジョンがなければなるまい。