司法試験合格者から浮かび上がってきた大きな矛盾。予備試験組235人合格の大躍進で、法科大学院の存在価値が問われている――。

「予備試験組」235人合格の爆発力

2006年から始まった新司法試験は2016年で11回目を迎えた。昨年9月6日に発表された試験結果では1583人が合格。新司法試験を導入した司法制度改革では、当初、年間の合格者数の目標を「3000人程度」としていたが、予想していたよりも司法に対するニーズが増えず、法曹資格を得たものの、法律事務所への就職難に直面するケースが相次いだ。そうした事態を受けて、政府は15年6月に合格者数を「1500人以上」とする方針を打ち出し、昨年の合格者数はその水準にとどまる形となった。

合格者の内訳で際立つのは、法科大学院(ロースクール)の2極化だ。合格者数が50人以上で、かつ合格率が全体平均の22.95%以上のロースクールは、東京、一橋、京都、慶應義塾、中央、早稲田の6校のみだった。逆に合格者が5人以下で、かつ合格率が平均の半分未満のロースクールは35校におよび、全部で74校あるロースクールの47.3%を占めた。そのうち、愛知学院、神奈川、京都産業、久留米、大東、東海、姫路独協は合格者が0人であった。

そして、もう一つ際立ったのが“予備試験組”の躍進で、235人の合格者数は全体の14.8%を占めた。また、その合格率は61.52%に達し、ロースクールで合格者数トップである慶応義塾の44.29%を大きく引き離した。さらに、合格者235人のうち、ロースクール在学中が86人、大学在学中が69人もおり、「法曹を目指す優秀な現役の学生なら、ロースクールの修了で受験資格を得るよりも、予備試験を選んだほうが近道」という見方を裏付ける結果となったのである。

本来、経済的な事情などでロースクールに入れない者を救済することを主目的に11年から始まった予備試験だったが、合格すれば新司法試験の受験資格が得られることから人気が高まり、受験者数は初年の6477人から、16年には1万442人までに急増。16年の予備試験合格者は405人で、このうち大学在学中が179人、ロースクール在学中が154人で、合わせると全体の82.2%を占める。スタートする際に「予備試験はロースクールの存在意義を揺るがしかねない」と懸念した法曹関係者の予想は、残念ながら見事に的中する結果となったのだ。