「予備試験組」がブランド化する矛盾

一方でロースクールの入学者数は、07年の5713人から16年には約3分の1の1857人へ急減。この間に「合格者数の実績を増やせず、入学者数が低迷する」という悪循環に陥るロースクールが相次ぎ、74校あるロークールのうち32校が、学生の募集停止ないしは廃止に追い込まれている。ちなみに16年の入学者数で定員を満たしたのは、一橋(定員85人・入学88人)、甲南(定員20人・入学25人)の2校のみ。先の合格実績で上位のロースクールでも軒並み定員割れという状況なのだ。

そうしたなか、「予備試験組の合格者は、ロースクール出身の合格者よりも優秀」というイメージが強まり、大手の法律事務所のなかには新規採用者の約半数が予備試験組の合格者というところも現れた。あくまでも「予備」であったはずの試験だが、その合格が「本流」へとブランド化しつつあるようだ。1年目の年収が1000万円超といわれる大手法律事務所への就職に有利なら、これからますます「ロースクールよりも予備試験へ」という流れが強まるのは間違いないだろう。

また、昨年末に法曹養成の制度で大きな変更が決まった。12月19日に法務省が、新司法試験に合格した司法修習生に対して、生活費などとして一律月額13万5000円を、さらに修習のために賃貸住宅に住む場合などには住居費として月額3万5000円を、今年度から給付すると発表したのだ。

しかし、かつてあった月額約20万円やボーナスを支払う給付制度を、財政難などを理由に11年から貸与制に変更した経緯がある。1年違っただけで、返済する必要がある貸与制から返済の必要のない給付制に変わるのでは、大きな不公平感を生みかねない。法務省の調査によると、新65期から68期で司法修習を修了した人のうち、貸与を利用しなかった人は26.1%のみ。貸与を利用した人の修習資金の残債務額の平均は296万5123円にもなる。さらに、ロースクール時代に貸与された奨学金の返済に追われる人もいて、「法律事務所に就職できずに『ノキ弁』『タク弁』になり、弁護士会の年会費や奨学金の返済で首が回らなない」という事態に陥っている人も少なからずいる。

もしも、大学在学中に予備試験に合格し、さらに司法試験をパスできれば、ロースクールの入学費も授業料もかからず、修習時には給付を受けられるようになるわけで、時間とお金の節約になる。そうした点においても、優秀な人ほど予備試験を目指す傾向が強まることが予想される。ロースクールを柱とした法曹養成制度は今後さらに大きく揺らいでいくことになりそうだ。今年の司法試験で予備試験組は、一体どのくらいの合格者を輩出するのだろう。