さらに、商社についても、大手を中心にさらなる英語力向上を目指す傾向が強まっている。
三井物産は、「英語ができるから海外駐在になるというわけではなく、ビジネスマンとしてのコミュニケーション能力がまずは大切だ」としながらも、中途採用については即戦力としての一つのラインとして「TOEIC730点以上」を応募要件に掲げており、引き続き英語力を重視する姿勢をにじませた。
2年前に中途採用で大手総合商社に転職し、現在はアルジェリアに駐在する30代の社員は、次のように説明した。TOEICの点数は900点を突破している。
「中途採用の面接の際、すぐに出張できるという前提で、業務で英語、それに仏語を使用した経験についていろいろ聞かれました。仏語については、実際にしゃべらされました。語学はあくまで副次的なものですけど、海外取引の部門であれば、中途の場合は当然ビジネスで使えるという前提になっているようです。国内担当についても、商社であれば社内基準として少なくともTOEIC700点が数字上のラインになると思います」
今、赴任地で日常的に使う言語は、日本語1割、現地公用語の仏語6割、英語3割だそうだ。
もはや、もともと海外業務が多い商社に限らず、「英語を使いこなせてこそ一人前のビジネスマン」という職場は業種、業界を問わず確実に増大しているといえよう。転職を目指すうえで、本当の英語力の有無は、明暗を分ける大きな要因になってきている。
(宇佐見利明=撮影)