熟年離婚が増加している中、トラブル続出なのが、離婚後、もともと住んでいた家(一戸建て、マンション)をどう“処分”するかといったこと。発売されたばかりの『離婚とお金 どうなる? 住宅ローン!』(プレジデント社・高橋愛子著)で取材・構成を手がけた、永浜敬子氏が典型的な「離婚後のトラブル」をレポートする。

「離婚成立しても、妻が家に居座り続けて困っている」

離婚が決まれば、できるだけ早く夫婦別々に暮らしたい。

二度と相手の顔も見たくない。相手に離婚の責任があり、こちらが慰謝料をもらう立場なら、さっさとできるだけ有利に事を進めたいものだ。

『離婚とお金 どうなる? 住宅ローン!』(高橋愛子著・プレジデント社)

ところが、感情がこじれると「勘定」より「感情」を優先してしまうケースもある。

Kさんは48歳。上場企業のエリートサラリーマンだ。平成13年に千葉市に2580万円で一戸建てを購入した。家族は妻と子供2人の4人家族だったが、妻は専業主婦だったので、物件はKさんの単独名義、単独債務だ。

傍から見ると経済的にも恵まれた理想的な家庭。しかし、4年前に離婚話が持ち上がった。原因はKさんの浮気である。子供2人は妻と一緒に暮らすことになった。Kさん側の有責ということで妻子の新居の家賃と養育費を月4万円支払うことで合意し、離婚が成立した。

にもかかわらず、妻と子供が元の家から出ていかないのである。

学校や交友関係など、子供たちの環境を変えたくなかったという妻の気持ちもわからないでもない。Kさんとしては浮気相手との結婚話も進み、なんとしてでも元妻に出ていってもらってマンションを処分し、新しい生活の元手にしたい。

そこで何度も出て行ってもらうように説得したが、話し合いになると離婚原因、つまりKさんの浮気に対しての話題を持ち出す元妻。浮気を責めるばかりでとりつく島のない元妻の態度に嫌気がさし、Kさんの足も遠のき、そのまま年月が過ぎてしまったのだ。

その後、Kさんは転職。浮気相手と再婚し子供も生まれた。家族が増えたことに加え、転職で以前より収入が減ったこともあり、次第に元妻への養育費を払うことが厳しくなってきたのだ。

マンションに居座り続ける元妻からは当然のこと、再三の催促。悪いことに、Kさん側の家計もさらに悪化し、ついに住宅ローンの支払いもできなくなってしまったのだ。

そうした現状ゆえ、今の妻との仲も悪くなり、精神的に追い込まれていくKさん。ローン会社からの督促がきても、現実から逃避したいあまりに放置してしまったのだ。するとある日、ローン会社から競売の申し立てが来てしまった。