愛知県のウズラ飼育農家で鳥インフルエンザウイルスが確認され、大量のウズラが殺処分された。鳥インフルエンザが突然変異し、人から人に感染する新型インフルエンザウイルスが誕生するのは時間の問題。パンデミック(感染爆発)が起きれば日本だけで最大64万人が死亡すると政府は予測しているが、鳥インフルエンザウイルスを死滅させる消毒薬が、今秋にも世界に先駆けて日本で製品化される見込みだ。
その研究に携わるのは、インフルエンザウイルス研究の世界的権威として知られる根路銘(ねろめ)国昭氏。厚生労働省の国立感染症研究所呼吸器系ウイルス研究室長やWHO(世界保健機関)のインフルエンザ呼吸器ウイルス協力センター長などを歴任し、現在は出身地の沖縄県の民間研究機関「生物資源研究所」の所長である。
根路銘氏は植物のセンダンとハンノキに鳥インフルエンザウイルスの殺傷成分を発見し、昨年特許を取得。製薬会社と提携して消毒薬の開発に取り組んでいる。
実は現在、鳥インフルエンザウイルスに汚染された養鶏場の除染に使用されている消毒薬には、ウイルスの殺傷能力はない。だが、根路銘氏が発見・抽出したセンダン抽出液の実証実験では5mgの量でヒトインフルエンザウイルス約50万個が10分以内に死滅、鳥インフルエンザウイルスでも同様の効果が確認された。またセンダン、ハンノキの粉末では、それぞれ5mgでヒトインフルエンザウイルス5万個、鳥インフルエンザウイルス4万個が10分以内に死滅した。
一方、センダンエキスの原液をマウスに毎日、0.5mlずつ飲ませたが、もともと自然に自生しているものだけに有害性はなかった。根路銘氏は原液を数十倍に薄め消毒液として噴霧することなどを検討している。
元朝日新聞社医療担当編集委員で医療ジャーナリストの田辺功氏はこう話す。
「これまでの消毒薬と抗インフルエンザ薬タミフルにはウイルスの殺傷能力がなく、パンデミックを防ぐのは事実上不可能だった。しかし、根路銘氏が発見した成分で大量の消毒剤を作り養鶏場や渡り鳥が集まる水辺に撒けば消毒と予防ができ、噴霧液にすればウイルスに汚染された学校や病院、交通機関、家庭を消毒してパンデミックを防げると期待されます」
製品化されれば朗報である。