──自動車の自動運転技術の開発が急速に進んでいるが、どう対応するか。

【北沢】協会では自動運転の法的責任について検討を重ねてきた。自動運転には4つのレベルがあり、レベル3まではドライバーが運転に関与するため、現行法に基づく損害賠償の考え方が適用可能だと考えている。それに対してレベル4は、加速・操舵・制動をすべてシステムが行い、ドライバーは運転に全く関与しない。そのため、事故が起きたときに、被害者の補償を誰が行うかが問題になる。そこで、レベル4の自動運転車については、従来の自動車とは別のものとして捉え、事故が起きた場合に被害者の救済が行われる仕組みづくりを推進していきたい。

──新たなリスクとしては、ほかにどのようなことが考えられるか。

【北沢】あらゆるものがインターネットでつながるようになる中で、特に危険だと考えているのがサイバーリスクだ。先日もサイバー攻撃を受けてJTBの顧客情報が大量に流出する事件が起きた。世の中、便利になればなるほど、その裏には巨大なリスクが生まれる。そのリスクを正確に判断し、ヘッジする保険はもちろんだが、事故の予防、事故が起きた場合の拡大防止、そしてそこから得た教訓を再発防止につなげていくこと。こうしたプロセスを含めたリスクマネジメントに関する情報を、世の中に積極的に発信していくことこそ、協会の重要な使命だと考えている。

日本損害保険協会会長 北沢利文
1953年、長野県生まれ。77年東京大学経済学部卒業後、東京海上火災保険(現東京海上日動)入社。2010年東京海上日動あんしん生命保険社長、東京海上ホールディングス取締役、14年東京海上日動火災保険取締役副社長、16年4月より取締役社長。16年6月より日本損害保険協会会長に就任。
(増田忠英=構成 枦木 功=撮影)
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