一般の朝礼はせいぜい5分くらいのもので、内容は主に情報の伝達と意見の発表だろう。そして、目的といえば社員の団結心をなんとなく醸成できればいいといった程度……。

それに比べるとリッツ・カールトンのラインナップは目的が明確だ。従業員のトレーニングであり、毎日繰り返すうちに、従業員は自発的に仕事について考えを深める仕組みとなっている。
ある日のラインナップは次の通り。主な参加者はリッツ・カールトン大阪のベルボーイ、コンシェルジュたち。

 「では、始めましょう。まずはゴールドスタンダードから」

参加者は「ゴールドスタンダード」と呼ばれる理念、サービスの哲学、従業員への約束といったリッツ・カールトンのモットーのうち、ひとつを唱和する。雰囲気は和気あいあいで、「声が小さい」などと叱咤する上司はいない。

ゴールドスタンダードを唱えた後は、「あなたのお客さまのWOW(感動)ストーリーをシェアしよう」というコーナーがあり、参加者のひとりが客との感動体験を語る。そして「今週の話題」コーナーでは、それぞれが自分の仕事観について語り、最後に、ひと口知識として世界の名言、ことわざが紹介される。ラインナップで取り上げられる項目は毎週、アメリカの本部から送られてくるという。

聞いていて感じたのは進行がしっかりしていること。よく朝礼ではひとりが大勢に向かって5分間程度のスピーチをするケースがある。その場合、緊張して頭が真っ白になったり、言葉が出てこなかったりすることもあるが、ラインナップは「誰もが発言できるように」内容が設定されているのだ。

サービスとはコミュニケーションだ。リッツ・カールトンのラインナップは各自のコミュニケーション能力を高め、そして、サービスそのものを考えさせる会といえる。