役員=経営陣にまで出世できる人は一握り。部課長止まりの人と、どう違うのか。正念場の行動パターンから読み解いてみよう。

台風に直撃されたとき

一歩踏み込む習慣が、出世のきっかけになることもある。防衛大学校出身で外資系企業での経験が長いストラテジックパートナーズジャパン代表取締役の兼本尚昌氏によれば「差がつきやすいのは、どんな状況においてもクイックレスポンスができるかどうか」。

たとえば深酒をした飲み会の席で、上司から仕事に関するちょっとしたことを質問されたとする。そのとき、聞かれた内容をきちんと覚えていて、「翌朝、上司がパソコンを立ち上げてメールをチェックする前」(兼本氏)に説明のメールを入れておくことができるかどうか。

「酔いつぶれる寸前というような、肉体的・精神的にきわめてきつい状況のなかでも行動を起こす意志があり、実際に行動することができる。さらに、そんなときにも質の高いパフォーマンスを出すことができる。その事実が驚きを生み、『あいつはどんなときでも結果を出せるやつだ』という信頼につながります。その意味では、極限状況にあるときほど差がつきやすいといえるのです」(兼本氏)

台風の上陸が予想される朝、普通の社員はいつものように家を出て、交通機関のマヒに巻き込まれ、遅刻を伝える電話を会社にかける。台風が来るのはわかっているのに、何も対策をしていないのだ。

一方、前日から会社近くのホテルに泊まり込み、早々と出社してくる社員もいる。

「電車が動かないので遅刻しますと報告してくる社員と、その電話を社内で受けて『わかった、あとは俺がやっておくから』と対応する社員。上司の身になれば、どちらを先に昇進させるかは簡単にわかると思います。ある外資系企業の社長に聞くと『できるやつは台風の朝も絶対に来ている』といっていました」(兼本氏)

一歩踏み込む習慣が、上司の信頼を得ることにつながるのだ。

ストラテジックパートナーズジャパン代表取締役 兼本尚昌
山口県出身。防衛大学校人文社会科学科国際関係論専攻を卒業後、ダンアンドブラッドストリートジャパン、ガートナージャパンなどを経て、ストラテジックパートナーズジャパンを設立。著書に『プロ・ヘッドハンターが教える 仕事ができる人のひとつ上の働き方』など。
(宇佐美雅浩=撮影)
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