役員=経営陣にまで出世できる人は一握り。部課長止まりの人と、どう違うのか。正念場の行動パターンから読み解いてみよう。

事業撤退を命じられたとき

ある事業の責任者をしているときに、会社から完全撤退を命じられる。たいへんつらい状況だ。

しかし、「もし撤退の判断が正しいとしたら、鬼になってリストラを進めるべきです」とヘッドハンターとして8000人以上の社長と面談してきた経営者JP社長の井上和幸氏は断言する。防衛大学校出身で外資系企業での経験が長いストラテジックパートナーズジャパン代表取締役の兼本尚昌氏も「日本人は情に流されやすく、損切りするのも苦手です。しかし、ここはロジカルに撤退を進めるのが正しいでしょう」という。

井上氏が続ける。

「一方的なリストラに抵抗して部下をかばうべきだ、と考える人もいるかもしれませんが、情に流されて経営を誤るわけにはいきません。転職のお手伝いをするときに『いまの会社はリストラを進めるというが、自分は反対だ。そんな冷たいことはできない』と真面目にいい募る人がいます。しかし経営視点で見れば、その人の意見は、やらなければいけないことを先延ばしするということです。また、見込みがない事業に取り残されたら、社員たちも再出発のチャンスをなくしてしまうかもしれません」

ここでは経営に対する当事者意識が問われている。

「厳しいことをいえば、そういう方は自分の都合しか考えていない。会社が傾いているのに『給料が下がったのは納得できない』と平気で不満を漏らすのもこのタイプ。社長にしてみれば、こういう人を役員にするわけにはいかないでしょう。厳しいようですが、この方には『あなたには経営が見えていないのではないですか』と申し上げました」(井上氏)

経営者JP社長 井上和幸
1989年、早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人事部門、広報室、新規事業立ち上げを経て、2000年に人材コンサルティング会社取締役就任。現在のリクルートエグゼクティブエージェントを経て、10年から現職。著書に『社長になる人の条件』など。
 
ストラテジックパートナーズジャパン代表取締役 兼本尚昌
山口県出身。防衛大学校人文社会科学科国際関係論専攻を卒業後、ダンアンドブラッドストリートジャパン、ガートナージャパンなどを経て、ストラテジックパートナーズジャパンを設立。著書に『プロ・ヘッドハンターが教える 仕事ができる人のひとつ上の働き方』など。
(宇佐美雅浩=撮影)
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