役員=経営陣にまで出世できる人は一握り。部課長止まりの人と、どう違うのか。正念場の行動パターンから読み解いてみよう。

何度提案しても企画が通らないとき

「新規事業というのは、上からの命令ではなく、現場から提案してゴーサインをもらうもの」

リクルートOBで経営者JP社長の井上和幸氏によれば、かつてのリクルートにはそんな気風があったという。しかし、簡単にはゴーサインは出ない。

「いまでは400億円事業に成長しているウエディングビジネスの『ゼクシィ』が典型でしょう。1990年代前半には、担当者が提案しては経営陣から却下されるということの繰り返しだったのです。それでもあきらめないで食い下がるから、ゴーサインを出したところ結果的には大成功。『ホットペッパー』と並んで、バブル崩壊後の苦境を救うリクルートの救世主になりました」(井上氏)

たとえ企画が通らなくても、あきらめずに提案し続けるような人こそ経営者にふさわしい、と井上氏はいう。

一方、ストラテジックパートナーズジャパン代表取締役の兼本尚昌氏は「もし提出した企画に自信があるなら、転職をする、もしくは起業するという選択肢も検討すべきです」と指摘する。

「たとえば90年代と比べて、最近は会社をつくることが容易になっています。最低資本金制度がなくなり、事務所を構えるコストも当時と比べて下がっています。いまは一流企業を辞めて起業するという人も珍しくありません。大企業にしがみつかなくても、自分のアイデアを形にすることはできるのです」

大企業のなかで出世の階段を一歩一歩上がっていくか、会社を立ち上げて事業を拡大し、地歩を築くか。出世には2つの道筋があることを、しっかりと意識しておくべきだと兼本氏は主張する。

経営者JP社長 井上和幸
1989年、早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人事部門、広報室、新規事業立ち上げを経て、2000年に人材コンサルティング会社取締役就任。現在のリクルートエグゼクティブエージェントを経て、10年から現職。著書に『社長になる人の条件』など。
 
ストラテジックパートナーズジャパン代表取締役 兼本尚昌
山口県出身。防衛大学校人文社会科学科国際関係論専攻を卒業後、ダンアンドブラッドストリートジャパン、ガートナージャパンなどを経て、ストラテジックパートナーズジャパンを設立。著書に『プロ・ヘッドハンターが教える 仕事ができる人のひとつ上の働き方』など。
(宇佐美雅浩=撮影)
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