役員=経営陣にまで出世できる人は一握り。部課長止まりの人と、どう違うのか。正念場の行動パターンから読み解いてみよう。

部下が反乱を起こしたとき

「課長のやり方は厳しすぎてついていけません!」

ストラテジックパートナーズジャパン代表取締役の兼本尚昌氏によれば、一流といわれる経営者の多くは、ミドル時代に部下からこんな言葉で反発されたことがあるという。

ヘッドハンターとして8000人以上の社長と面談してきた経営者JP社長の井上和幸氏も次のように証言する。

「成功した経営者はみなさん、人当たりがよく温和です。しかし、若いころはどうだったかを聞くと、ほぼ例外なく厳しい上司だったといいます」

理由は簡単だ。兼本氏が解説する。

「リーダーになる人は、仕事の能力が高く、ストレス耐性も強いのが普通です。そういうタイプの人は、基本的に他人の能力を推し量るのが苦手です。自分を基準に『これぐらいはできて当然』『自分と同じぐらいまでは耐えられるはず』と思い込んでしまうのです。しかし自分にとっては普通でも、他人にとっては苦痛にすぎないことはままあります。だから、何かのときに部下が反乱を起こすということも不思議ではありません」

つまり、能力が高いからこそ引き起こしてしまう問題なのだ。

その「反乱」を通じて他人とのギャップに気づき、部下との関係を再構築することができたときにはじめて、その人は経営者としての資質を開花させる。これが兼本氏の考えだ。

いかに温和な態度を身に付けるか

さしあたっては、「部下の反乱」を収めなくてはならない。どう対処すればいいか。

「部下がもし『厳しすぎてついていけません』といっているのだとしても、真の問題は仕事上の要求が厳しすぎることではありません。部下とのコミュニケーションが不足していることが問題なのです。たとえ部下の限界がわからずに負荷をかけすぎていたのだとしても、それによって部下の不満が高まっていることに気づくことができれば、限界に達する前に対処することができるのです」(兼本氏)

コミュニケーションを密にするには、人当たりのいい部下を使って、不満の在り処をそれとなく聞き出してもらうというやり方もある。反対に、その部下の口から自分の考えを伝えてもらってもいい、と兼本氏はいう。