東京都心で新築オフィスビルの空室率が上昇している。昨年秋のサブプライムショックによる世界不況以後、急激に増え、今年5月末時点で30.83%。業績不振の企業がオフィス賃料の見直しを行った結果で、既存物件に比べると募集金額が高めとなる新築物件は苦しい。これらは“空”の状態で竣工するので、必然的に埋まるまでに時間がかかる。
仲介大手の三鬼商事の空室率調べでは、ビジネス地区と呼ばれる5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の既存ビルも含めた同月末の空室率は7%弱。前月比プラス0.17ポイントで、16カ月連続での上昇。この数字は、旧国鉄用地再開発で大型ビルが竣工し、供給過剰となったオフィスの空室率が7.15%になった2004年9月に次ぐ水準だという。
業界関係者の1人は「企業における不況期のコスト削減策として、オフィス賃料の見直しが一番簡単です。建物内にある5つのフロアを3つにしたり、同フロアの30%分だけ賃貸契約を打ち切るような例もあります。景気の底打ち感で、4、5月は若干改善したものの、年内は弱含みで推移するでしょう」と見ている。
名門大手企業や、その時代を代表する先端企業が入居するオフィスビルの市況は景気動向とほぼシンクロする。丸の内など一等地の有力新築ビルが2桁の空室率となるのもそのためだ。しかも、2、3年後には耐震偽装問題で着工が遅れていたビルの完成を控えており、今後も需給バランスは読みにくい状況だといっていい。
(ライヴ・アート=図版作成)