長引く不況でサラリーマンの財布の紐が固くなっている。彼らの愉しみである仕事帰りの一杯が、“家飲み”に変わりつつある。ビール市場では、ビールや発泡酒より価格の安い第3のビールが健闘。ビール大手5社の課税数量のカテゴリー別内訳を見ると、ビールと発泡酒がシェアを落とすなか、第3のビールが今年1~6月累計で29.1%を占めるまでになった。
こうした動きを背景に、この分野にイオンとセブン&アイ・ホールディングスが7月下旬からPB商品を投入した。いずれも傘下のスーパーでは1缶100円(税込み)の価格設定をしており、この8月は数少ない成長市場に活路を求める“第3のビール夏の陣”が繰り広げられている。
もちろん、ビールメーカーも手をこまねいてはいない。絶好調の「のどごし〈生〉」を中心に第3のビールで4割強のシェアを持つキリンビール・営業本部マーケティング部の山崎徹氏は「節約志向もさることながら、もうひとつの拡大要因として香味の向上が挙げられる。それが発売直後の試し飲みだけに終わらず、着実なリピートにつながってきた」と話す。
同社では、9月9日に新商品「ホップの真実」を発売する。ホップをふんだんに使用しており、山崎氏は「プレミアムビールのような飲みごたえに仕上がった。第3のビールの範疇を超えたと自負している」という。市場の成長とともに多様化する消費者のニーズに応える商品といっていい。そうした動きが、多くの新たなファンをつくりそうだ。
(ライヴ・アート=図版作成)