部下を目標の達成だけに邁進させた曹操

現代でも「このリーダーを支えたい」「この上司についていきたい」と周囲に強く思わせる人物ほど、やはり結果を出しているものです。そのような人物(上司)は、部下も周囲にいることで、自分の能力を発揮させてもらえ、組織の勝利に貢献できている充実感を与えることができるものです。

部下の能力を引出し、活躍の場を与える上司と、自分の体面だけを大切にして、能力のある部下さえ押さえつけてその仕事ぶりを疑うことしかしない。三国志の歴史は、どちらのリーダーが勝利を収めるのか、曹操と袁紹で劇的な結果を私たちに伝えているのです。

曹操は人材、特にずば抜けた才能を持つ人材を愛しましたが、同時に組織管理においてはメンバー個人の甘えやわがままを一切許しませんでした。それゆえに、優れた人材が集まりながらも分裂せず、一致団結して曹操軍の勝利へと突き進むことができたのです。

一方の袁紹は、もともと他陣営にいた田豊(でんほう)という優れた軍師を招聘して、自軍に組み入れていましたが、同じ袁紹陣営にいた逢紀(ほうき)という人物が田豊と仲が悪く、彼の悪口を袁紹に吹きこみ続けたことで、優れた田豊の策謀がすべて否定され、袁紹軍は、才能ある者と口が達者な者が争い、バラバラに分裂して無残な敗北を喫しました。

袁紹は包容力のあるリーダーの仮面をつけながらも、部下への信頼と甘さをはき違えており、脱線する部下に甘く、組織のメンバーを全体目標に向けて集中させることができませんでした。一方の曹操は、才能を愛し部下を信頼しながらも、目標と関係ないことをする者、仲間の足を無意味に引っ張ろうとするものを遠ざけたのです。

部下を信頼する姿勢と目標達成への厳しさはセットでなければならず、甘さを情け深いことと勘違いしているリーダーは、横着者には慕われますが、組織を勝利に導くことはできません。信頼と甘さをはき違えなかった曹操は、部下に愛されながら勝利を重ねることができたのです。

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