孫子の兵法と、飯島の兵法

みなさんは、舛添要一氏の記者会見を見て、どうお感じになられたことだろう。私の目には、頭は抜群にいいのだろうけど、偏差値エリートの悪い面にうつった。「そんな説明で納得すると思うのか」とこちらが思っても、本人は自信満々なのである。印象を悪くするだけの謝罪会見などしないほうがいい。

謝罪会見をどう切り抜けるかについては、30年以上、永田町にいた私にとって、非常に頭の痛い課題であった。やり方一つで大臣のクビが飛び、果ては内閣が倒れてしまう。そういったギリギリの場数だけは踏んできた私のやり方を、今回少しだけだが公開してみようと思う。物足りないと思った方は、拙著「孫子の兵法」をお読みいただきたい。

『孫子の兵法』飯島勲著 プレジデント社

しかし、このタイミングとあって、舛添氏には拙稿を読んでほしくないと思う。もし、あなたが舛添氏なら、ここまでで読むのを止めて、誠実に政治資金を使うことを心がけるようにしてもらいたい。

拙稿は、あくまで、つまらない揚げ足とりばかりするかつての悪しきマスコミの風潮に対抗する手段である。私が仕えた小泉純一郎元総理は、厚労省の幹部が関わった全く関係のない事件の記者会見まで引き受けて説明責任を果たしてきた。その点を間違えないでほしい。

当連載を読んでくれている知人から「私のこの連載に『孫子の兵法』に近いものを感じる」と感想をいただいた。約3000年前の大軍略家になぞらえるなど、少し恥ずかしい気持ちがしたが、あらためて「孫子」を読んでみると、なるほど共感できる点が非常に多い。

私が長く秘書生活を送った永田町はある意味で現代の戦場である。関わってきた数多くの選挙・政争は、戦争・戦闘にほかならない。武器を使った殺し合いこそなかったが、人員の配置や事前の駆け引きなど、まさに孫子と同様の「軍略」が必要だったのだ。