本邦初公開! これが飯島勲の「孫子の兵法」だ 「孫子」の作者・孫武は、孔子とほぼ同時代、春秋時代の末期に活躍した。「孫子」は兵法書であり、すぐに使える実践の書であった。硬直した考えを脱し、柔軟な戦略をとっていることから、時代を超えてリーダー必読の書となったのだ。写真は中国の孫武公園の孫武像。(写真=時事通信フォト)

「孫子」の「始計篇」には、このようなことが書いてある。

「兵は国の大事。死生の地、存亡の道なり。察せざる可からず」から始まる、戦略の基本を説く章だ。「将とは、智・信・仁・勇・厳なり」「兵は詭道なり」など、政治家が好んで使う名言も多い。

私が思うに始計篇のハイライトは、「兵は詭道(きどう)なり」とそれに続く部分だ。孫子は「敵を欺け」というだけでなく、具体的にどう攻めればいいかも伝えてくれている。

「故に能くして之に能くせざるを示し、用ひて之に用ひざるを示し、近くして之に遠きを示し、遠くして之に近きを示す。

利して之を誘ひ、乱して之を取り、実ならば之に備へ、強ならば之を避け、怒らして之を撓(みだ)し、卑しうして之を驕らし、佚(いつ)して之を労し、親しまば之を離す。

其の備へ無きを攻め、其の不意に出づ、此れ兵家の勝、先づ伝ふ可からざるなり」

つまり、こういうことになる。

「できるのにできないふりをし、使っても使わないふりをし、近くにいても遠くにいるように見せかける。

利益をちらつかせて誘いこめ。相手が混乱しているようなら奪い取れ。敵の戦力が充実しているときには守りに徹せ。敵のほうが強ければ戦うのを避ける。挑発して怒らせて敵の気持ちを乱す。下手に出て相手を驕らせる。相手のほうを動かして疲れさせる。敵と友好関係を結ぶ相手を分裂させる。

相手が備えていなければ攻める。不意を突け。これが兵法における勝利である。相手の出方によって攻め方が変わるので、あらかじめ決めることはできない」