奇をてらいひょうきんに振る舞うのではなく、ただ一生懸命働いた。肩もみを頼まれれば、1時間でも、ずっとニコニコしながらもみ続けた。

いまだにおかみさんは、困ったことがあると電話をくれて(笑)。「裏の木戸が壊れちゃったから直して」とか、「いただいたイスの肘掛けが邪魔なんだけど」とか。急いで駆けつけて直すと「やっぱりたい平がいると助かるわ」と言いながら、51歳の男におこづかいをくれる(笑)。

久しぶりに訪ねた土地で、電車の待ち時間が10分あったとする。

「5分あれば、お世話になったあの人に挨拶ができる」と思えば、たい平さんは迷わず足を運ぶ。突然の訪問に相手は困惑しまいか――。否、心配ご無用。わざわざ訪ねてくれたたい平さんの姿を見て、喜ばない人はいない。

「僕にできることはなんだろう?」

たい平さんは今日も、そんな想いを抱いて高座に上がっている。

林家たい平
1964年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、林家こん平に入門。92年、二ツ目に昇進直後から頭角を現し、数々の賞を総なめ。2000年に真打ち。06年よ り「笑点」の大喜利メンバー。現在、武蔵野美術大学客員教授。2男1女の父。『林家たい平の落語のじかん』が好評発売中。
(干川修=撮影)
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