夜の健康食ニーズが顕在化!

ちなみに、おぼんdeごはんの定食の価格は、ほぼすべてが税込1000円を越えています。中心は1200~1300円といったところですから、決して安いとは言えません。しかし、アルコールに頼らないで飲食店を経営しようとすると、結果的には料理の価格がやや高くなってしまうのです。

実は同様のことが大型のショッピングモールのフードコートでも起こっています。フードコートと言うと、気軽に使える安いところというイメージがあるかもしれません。しかし、最近のフードコートは1品が1000円以上するようなメニューも多く、家族そろって食事をしたら、その金額は決して気軽なものではなくなっています。

背景には食材費や人件費の高騰などもありますが、アルコールに頼らないで店を継続できるだけの利益を上げようとすると、料理の価格は「意外と高い」というところに落ち着かざるを得ないのが多くの飲食店における実情なのです。

「夜にお酒なしで健康的な食事を楽しむこと」を求めようとすると、そもそも選択肢が少ないうえに、現時点ではさらに「ちょっと価格が高いこと」を受け入れる必要が出てきてしまいます。あるいは結局は外食ではなく自宅で食べたほうが良いという結論になってしまうのかもしれません。

しかし、こうしたニーズ自体は今後ますます強くなるでしょうから、その受け皿となる新しいモデルが出てくることに期待したいと思います。ただし、それは既存の外食の延長戦上にあるものではなく、例えば「夜の社員食堂」だったり、「スポーツクラブ併設のレストラン」だったり、「地域コミュニティによるNPO的なモデル」だったりと、これまでとは異なる価値観や収益構造の上に成立するものになるような気がしています。

子安大輔(こやす・だいすけ)●カゲン取締役、飲食プロデューサー。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。
株式会社カゲン http://www.kagen.biz/

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