「非正規の報酬は低い」を証明する調査
大手流通業では正社員と非正規の処遇の違いの基準を「転居を伴う転勤の有無」にしているところも多いが、会社によっては非正規と同じ業務に従事しながら、ほとんど転勤したこともない社員もいる。合理的な理由とは言えない基準を放置したまま、正社員との処遇格差をつけている企業も少なくない。
本来の同一労働同一賃金は転勤の有無などは関係ないはずだ。職務内容や職責の違いによる一定の給与差があるのは当然としても、その差が本当に正しく、合理的なのかを追求するべきだろう。
正社員と非正規の月給格差が合理的であるかどうかを調べるために、仕事の価値(職務価値)を比較する方法がある。実際にその方法で調査したところ、合理的とはいえない格差も見つかっている。
全国生協労働組合連合会(生協労連)は08年に大学の研究者の協力を得て、米国流の職務分析の手法を使って生協店舗の正社員と非正規について職務内容を分析し、仕事の価値と賃金格差の実態を調査している。
具体的には、正社員、管理職パート、一般パートの3者を対象に、店舗の仕事を洗い出し、職務ごとに知識・技能、職責の重さ、仕事でもたらされる負担など4つの指標で評価し、点数化を試みた。
その結果、正社員が最も高い点数になったが、正社員の点数を100とした場合、管理職のパート92.5、一般のパート77.6という結果が出た。
正社員のボーナスを加えた時給賃金は2153円。これを基準に先の比率で計算すると管理職のパート1991円、一般パート1671円になった。つまり、職務価値に照らせば、この時給が合理的な金額ということになる。
しかし、実際にもらっている時給は、管理職パートは1377円、一般のパート1024円だった。管理職パートは合理的金額より614円、一般のパートは647円も低かったのである。
同一労働同一賃金の視点に立てば、パートの時給を600円以上引き上げる必要があるということだ。
職務・職責を考慮してもこれだけの格差があるのである。
EUでは正社員と非正社員について、客観的に正当化されない限り、不利益な取扱いを禁止する均等待遇原則を法制化している。EUであれば、違法となり是正を求められるかもしれない。現在、安倍政権はEUと同じような法制化を検討しているが、注視していく必要がある。
特殊な働き方の日本で断言できるのは、非正規社員が全労働者の4割に達している現在、ただ単に「自分は正社員だから」「難関の就職試験をクリアしたから」といった理由で高い月給をもらうことは許されなくなるということではないだろうか。