一方、人間は、学習法がわかっていても、それを徹底しないことが多い。画期的に新しい学習法を考案する必要などない。ただ、基本を繰り返し、やればいいだけの話なのであるが。

たとえば、最近の人工知能は「達人」に学ぶ。囲碁の打ち方でも、自動車の運転の仕方でも、達人と呼ばれる人たちが実際にどのような選択をし、行動をとるかを、ビッグデータで取り込み、解析する。

人間が英語を学ぶ際にも、同じ姿勢が必要である。ネーティブなどの、英語が達者な人の発音をひたすら聞く。そのことで上達するはずなのに、徹底してやることができない。

人工知能の学習において大切なことの1つは、実際の行動と正解の間の「誤差」を検出して、それが小さくなるように修正することである。これを繰り返すことで、急速に正解率が高まっていく。

しかし、英語学習において、誤差の修正を地道にやっている人はどれくらいいるだろうか? 書くことでも、話すことでも、自分のアウトプットを、お手本と比較して、修正していく。それを繰り返せば、必ず、正解率は高まっていくはずなのである。

達人の英語のパターンの徹底的な反復学習と、誤差の修正。この、基本中の基本という学習法に徹することによって、人間もまた、英語力を飛躍的に向上させることができるだろう。そう、まるで、「人工知能」のように。

私が脳の研究を始めた24年前、まさか、人間が人工知能に学ぶ日が来るとは思わなかったが、時代は変わった。

人工知能の「学習の基本」の誠実な繰り返しに学ぶべきだろう。英語習得に、マジックなどない。敢えて言えば、繰り返しが魔法となるのだ。

(写真=AFP/時事)
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